artscapeレビュー

レオナール・フジタとモデルたち

2016年10月15日号

会期:2016/09/17~2017/01/15

DIC川村記念美術館[千葉県]

昨年は戦後70年でたくさんの戦争画展が開かれ、映画「FOUJITA」が公開されたこともあって、藤田嗣治への関心が高まったが、いまふたつの大きな「フジタ展」が首都圏で開かれている。府中市美術館の「生誕130年記念 藤田嗣治展」は総合的な回顧展だが、こちら川村記念美術館のほうはタイトルにもあるように、モデル=人物表現に焦点を当てた企画だ。それにしても川村で「フジタ展」という取り合わせは意外な気もするが、同館は肖像画《アンナ・ド・ノアイユの肖像》を所有していること(依頼主が気に入らなかったため未完成に終わったというエピソード付き)、そして藤田の最初の妻とみの実家が同館近くの市原市にあったことも関係しているかもしれない。その妻宛の手紙やパリから送られたモード雑誌なども展示されている。作品は初期から晩年まで約90点。戦争画はないが(人物表現としては特殊すぎる?)、例の乳白色の裸婦をはじめ、だらしない姿を見せつける戦前の《自画像》や、細部まで丁寧に描かれた戦後の《ジャン・ロスタンの肖像》など、よく知られた作品もそろっている。圧巻は《ライオンのいる構図》をはじめとする4点の群像表現。3メートル四方の大画面にそれぞれ数十人の人物が描かれた大作だ。この大作志向、物語画志向がのちの戦争画につながっていくのだろうか。

2016/09/16(金)(村田真)

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