artscapeレビュー

ようこそ!横尾温泉郷

2017年01月15日号

会期:2016/12/17~2017/03/26

横尾忠則現代美術館[兵庫県]

お風呂が恋しい季節に合わせて、横尾忠則が銭湯や温泉を描いた絵画、版画、ポスターが集められた。展示の主体になったのは2つのシリーズ。ひとつは2004年に元銭湯の画廊SCAI THE BATHHOUSEで個展を行なった際に発表した「銭湯シリーズ」、もうひとつは2005年から約3年間にわたる誌連載のために描かれた「温泉シリーズ」だ。その合間に、1970年代から現代までの全国各地を描いた作品も配置された。筆者が注目したのは「銭湯シリーズ」である。横尾が子供の頃に母に連れられて入った女湯の記憶を元にした同作では、画中に鳥居清永、ピカソ、ドローネ、デュシャンらの引用が散りばめられており、作品の上下左右が繋がるように描かれるなど仕掛けが満載だった。また本展では城崎温泉などから協力を仰ぎ、会場内に蛇口、洗面器、脱衣籠、脱衣箱、扇風機、体重計などが配置され、観客が座って観覧できる座敷や浴槽、さらには温泉卓球ができる卓球台まで用意されていた。こうした演出もあり、本展は非常に楽しい展覧会に仕上がっていたのだが、記者発表時には横尾からは「まだまだ遊びが足りない」と駄目出しが出ていた。学芸員はつらいよ。でも、毎回作家から厳しいチェックを受けることで、彼らは鍛えられていると思う。

2016/12/16(金)(小吹隆文)

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