artscapeレビュー
台北 國立故宮博物院─北宋汝窯青磁水仙盆
2017年01月15日号
会期:2016/12/10~2017/03/26
大阪市立東洋陶磁美術館[大阪府]
台北の國立故宮博物院から、「神品」あるいは「人類史上最高のやきもの」と称される北宋汝窯青磁水仙盆4点と、清時代につくられた精巧なコピー1点、それらの付属品が来日。大阪市立東洋陶磁美術館が所蔵する北宋汝窯青磁水仙盆1点と合わせて展示された。これらの作品を見たときに私が思い出したのは、数十年前の学生時代に購入したジョージ・セル指揮/クリーヴランド管弦楽団のLPレコードに、評論家の吉田秀和が執筆したライナーノーツだ。そこではセルの音楽性を元宋から明清の陶磁器や北宋画にたとえ、「あのひんやりした清らかさと滑らかな光沢を具えた硬質の感触」、「茶の湯で尚ばれる不規則な曲線にみちたいびつで、ざらつく手ざわりの茶碗とは正反対の美学」と記されている。本展を見た瞬間、私の脳裏にその一文がよみがえり、「あぁ、吉田秀和が言っていたのはこれか」と納得した。率直に言って、私は北宋汝窯青磁水仙盆の真価を理解できていない。しかし、吉田秀和の一文とセルの音楽を頼りに本展を見ることで、ある種の感慨に浸ることができた。そこには、完全なるものへの飽くなき希求とその結実が確かにあった。
2016/12/09(金)(小吹隆文)