artscapeレビュー
南極建築 1957-2016
2017年01月15日号
会期:2016/12/09~2017/02/21
LIXILギャラリー大阪[大阪府]
極寒の過酷な自然環境─ブリザードや雪の吹き溜まり─に耐えうる建築とは何か。本展は昭和基地を中心に、南極の建築物がどのように進化してきたかをたどる。その形成に寄与したのが建築資材や物資を運ぶ観測船で、その大型化が建築物の規模拡大に影響した。1957年に初めて設置された昭和基地は木質のプレファブ建築。住宅大手メーカーによるプレファブ工法が国内での販売へと展開してゆき、それが基地建設にも応用されていった時代背景を考えると面白い。気温がマイナス50度にも及ぶ現地で建材からの複雑な工事が必要なく、船で運んで組み立てるだけで使用ができるからだ。展示では、船の変遷とともに建築の形態と機能が発展してゆくさまを見ることができる。さらに観測隊員の現地での生活を想像しやすいようにと、日用品や装備を入れた、第一次隊の梱包用の木箱で展示用通路がつくられている。1957年から2016年まで5期にわたる歴代の建築物を通覧すると、基地の形状自体がもつ魅力にも気付く。近未来的な造形もあり、見ていると面白い。映像資料も工夫されているので、南極における環境の実態と、当地での快適な居住性の追求に関わって知恵と実験を重ねてきた人々の営為について実感する。[竹内有子]
2016/12/10(土)(SYNK)