2021年06月01日号
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artscapeレビュー

松江泰治「suevey of time」

2010年12月15日号

会期:2010/10/23~2010/11/20

TARO NASU[東京都]

写真作品15点と、映像作品7点による展示。初期作品(1987年発表の「TRANSIT」)と新作のビデオ作品(「suevey of time」)という組み合わせは、10月に同じ会場で開催された宮本隆司展とまったく同じである。ギャラリーの企画意図があるのかと思ったのだが、「まったくの偶然」なのだそうだ。だが、このところ強まりつつある、写真を中心に発表してきた作家が映像にも触手を伸ばそうとしているという傾向のあらわれといえるだろう。フル・ハイビジョンカメラの登場とモニターの性能のアップによって、写真家たちも充分に納得できる画像レベルをキープできるようになったことが、その背景にありそうだ。
「TRANSIT」は松江泰治の個展デビュー作で、その頃はまだ東京大学理学部地理学科を卒業したばかりだったはずだ。在学中から撮りためていた35ミリフィルムを使った路上スナップには、当時彼が私淑していた森山大道の影響が色濃い。だが同時に、その後の松江の代名詞となった、大判カメラによる「Landscape」シリーズにつながっていく要素もはっきりと見てとれる。画面全体を、地上に遍在する事物の表層の連なりとして、等価に把握していく視点が見事に一貫しているのだ。彼の作家活動の原点を、あらためて確認できたのがとてもよかった。
新作の「suevey of time」は意欲作である。撮影されている風景は、松江のこれまでの作品でおなじみの場所であり、視点を高くとるカメラ・ポジションも共通している。フルハイビジョンの画像は鮮明で、一見するとスチル・カメラで撮影された作品のようだ。ところが、画面を眺めていると自動車や人物が横切ったり、道端の猫や草原で草を食んでいるリャマがわずかに移動したりして、それが動画であることがわかる。さらに画像がループ状につながっているので、そのつなぎ目の場所にくるとイメージがふっと消えて、わずかに違った場所に再び出現したりする。静止画像と動画との違いを逆手にとって、事物を「見る」という行為を再検証しようとしているのだ。「時間」という体験そのものの映像化の試みという見方も成り立つだろう。宮本隆司もそうなのだが、松江も作品の発想そのものが、よりフレキシブルなものに変わりつつある。

2010/11/09(火)(飯沢耕太郎)

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