artscapeレビュー
泉太郎「こねる」
2010年12月15日号
会期:2010/11/02~2010/11/27
神奈川県民ホールギャラリー[神奈川県]
昨年暮れ、同じ場所でのグループ展「日常/場違い」でぶっちぎりの作品を見せてくれたと思ったら、もう一本釣りされて個展だ。少し早すぎるんじゃない? だって彼の作品は階段の踊り場とかギャラリーの備品室とか隅っこのほうでイジケて見せるほうが本領を発揮するのであって、こんなでかいギャラリーを丸ごと与えてしまうのは不粋ではないか、と思ったからだが、大間違いでしたね。空間の大きさは関係なく、その場所を読み切って作品をつくっている。たとえば大ギャラリーの円柱に沿って螺旋状の道をつくり、カメラをつけた車を走らせて映像を撮った作品。この円柱はかねがね「邪魔物あつかい」されてきたが、それをこれほど有効活用した例を知らない。あるいは、細長いギャラリーに小屋を組み立て、なかにペンキや日用品とともに本人が入り、小屋ごと回転させて撮影した映像インスタレーション。ギャラリーの床には小屋が回転した跡が残っているのだが、これはひょっとして昨年の「日常/場違い」に出された久保田弘成の廃車を回転させる映像や、電柱を洗車機に通すインスタレーションと共鳴しているようにも見える。空間と時間をこねまわした見事な個展。
2010/11/27(土)(村田真)