artscapeレビュー
澤田知子「Mirrors」
2010年12月15日号
会期:2010/10/24~2010/11/24
MEM[東京都]
現在はニューヨークを拠点に活動している澤田知子。今回も相変わらずの「セルフポートレート」だが、以前の作品とは微妙に印象が違って見える。前はどれだけ違ったタイプの人物に、どれだけ大きな幅で変身できるかが目標のようなところがあったのだが、近作になるにしたがってより微細な差異にこだわり始めた。今回の「Mirrors」は一卵性の双子がテーマで、よく似た二人の人物が並んでこちらを見ているポートレートのシリーズである。いうまでもなく、どちらの人物も澤田自身が演じているのだが、髪型、メーキャップ、衣裳などを微妙にいじって変えている(まったく同じように見える作品もある)。その細かな違いを見比べているうちに、自分と同じ顔の人物がもうひとりいるという、あの双子という存在につきまとう奇妙な違和感=恐怖感がじわじわと形をとってくるのに気がつく。旧作のような派手さはないが、玄人好みのいいシリーズだと思う。
ちょっと思い出したのはザ・ピーナッツのこと。1960~70年代に人気があった双子歌手だが、彼女たちの鼻の横にはホクロがあって、その位置の違いで二人の区別がつくようになっていた。澤田知子も鼻の下にホクロがある。実はそのホクロを目の横に移動させた作品が一点だけある。だが、他の作品ではホクロは元の位置のままだ。それが妙に気になってしまった。ホクロの移動をもっと積極的に試みると、面白い効果を生むのではないだろうか。
2010/11/09(火)(飯沢耕太郎)