2021年11月15日号
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artscapeレビュー

村上友重「それらすべてを光の粒子と仮定してみる」

2010年12月15日号

会期:2010/10/29~2010/11/25

CASHI[東京都]

タイトルがとてもいい。「それらすべてを光の粒子と仮定してみる」というのは、写真家のものの見方の基本といってよいだろう。そのことで何が見えてくるかといえば、世界は光の粒子の物質的な集合であり、その疎密によって形成された、あらゆる部分が等価な構造体であるということだ。写真家はその流動的な構造体を、予断のない眼差しで切りとっていく。その結果として、写真家本人にもまるで予想がつかなかったようなイメージが立ち現われてくることがある。その驚きを写真家と観客が共有する時にこそ、写真を「見る」ことの歓びがあふれ出してくるのだろう。
村上友重の今回の個展の作品には、そのような歓ばしい、幸福な気分がしっかりと定着されていた。正直、以前の彼女の作品には、ややひ弱で優等生的なそつのなさを感じてしまうことがあった。だが、どうやらスケールの大きな写真作家への道を、迷うことなく歩き始めたようだ。巨大なロールサイズの印画紙にプリントされた飛行機の光跡のシリーズなど、思いきりよく余分な部分を切り捨てることで、「自分はこのように見た」という確信をさわやかに主張している。逆に「山肌に霧」や「霞む船」といった、霧や水蒸気が画面の全体を覆っているような作品では、「見えそうで見えない」曖昧なイメージを、切り捨てることなく抱え込もうとする。世界に向けられた眼差しが以前より柔軟になり、強靭さをともなってきているのだ。
だが、むしろここからが正念場だろう。村上友重という写真作家が何者なのか、そろそろ、もう少しクリアーに見えてくるような決定的な作品がほしい。

2010/11/12(金)(飯沢耕太郎)

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