2021年11月15日号
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artscapeレビュー

鯉江真紀子 個展

2010年12月15日号

会期:2010/11/12~2010/12/22

ツァイト・フォト・サロン[東京都]

京都在住の鯉江真紀子は、一貫して風景を多重露光した大きな画面の写真作品を制作し続けてきた。特に今回の個展でも展示されていた、競馬場らしき場所に群れ集う人の群れを、俯瞰するような構図で撮影した作品に執着し続けている。鯉江の心を捉えているのは、人が集団となった時に発する巨大なエネルギーの放出のあり方ではないだろうか。個々の人物を撮影しただけでは見えてこない、圧倒的な群衆のオーラのようなものが、多重露光の操作によってより増幅されて伝わってくる。
しかも、2000年代初頭にツァイト・フォト・サロンで展示されていた作品と比較すると、そのオーラの捕獲装置の精度が増し、洗練されてきているように感じる。2009年に、岡山県倉敷市の大原美術館を舞台にした大規模な個展を成功させたことで、写真作家としての自信が深まっているのだろう。さらに今回の展示では、従来の群衆の多重露光の作品に加えて、シンプルな構図で光と影のコントラストを強調した、2枚組のシークエンス作品もいくつか展示されていた。発想と手法の広がりによって、さらなる飛躍が期待できそうだ。なお、2010年12月中には代表作を集成した作品集『Aura』(青幻舎)が刊行される予定である。

2010/11/24(水)(飯沢耕太郎)

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