artscapeレビュー
2013年02月15日号のレビュー/プレビュー
鶴友那「時の集積と追憶」
会期:2013/01/12~2013/02/09
目のまわりが黒ずんだ女性(と花)をモデルにした絵。女は和服を着ているものが多く、ちょっと不健康で退廃的な大正ロマンの香りを漂わせる。と思ったら、作者は関東大震災後の大正時代を東日本大震災後の現代にダブらせてるそうだ。これで女の手足を切断したら会田誠になる……ならないか。作者の鶴(名前からして抜きん出てる)は今年26歳、佐賀大の大学院を出たばかりの若手というから驚く。聞くところによると、リアリズム絵画で知られる小木曽誠が教鞭をとる佐賀大学文化教育学部からは、有望な画家がすでに何人も輩出しているとのこと。美大でないからといってあなどれない。
2012/01/31(木)(村田真)
第7回 shiseido art egg展「久門剛史」
会期:2013/01/08~2013/01/31
資生堂ギャラリー[東京都]
大小ふたつの展示室にそれぞれ4畳半ほどの台をつくり、一方は畳を敷いてこたつを置き、もう一方はフローリング仕立てでデスクを置いている。かたわらにはレンガを円筒形に積み上げた井戸のようなもの、大きなゴミ箱が設置され、天井からは照明が吊るされている。スピーカーから子どもの声や時報、ファクス音、電車の通過音などが聞こえ、急に照明やこたつが光ったり……。ちょっとおもしろいけど、もっともっとおもしろくなりそうな可能性を秘めた作品。もうひとつ時計の作品もあって、秒針に小さなルーペがつけられ、その下の文字盤にぐるっと黒い点が打たれている。黒い点は小さな文字で文章になっており、ルーペで読む仕掛けなのだが、文字が小さいうえにルーペがカチコチ動くので読みとれない。洗練された手つきだ。
2012/01/31(木)(村田真)
関根美夫──身体から記号へ
会期:2013/01/26~2013/02/23
東京画廊[東京都]
関根美夫は具体美術協会の創立メンバーのひとり(もの派は関根伸夫)。代表的なソロバンの絵を中心に、初期のアンフォルメルな抽象画や貨車を描いた絵(開いた扉から能面や女の人がのぞいてる)なども展示されている。タイトルに倣っていうと、初期のアンフォルメル絵画が身体性を強調したものだとすれば、その後のソロバンや貨車の絵は身の回りの日用品を記号化したポップアートといえる。画廊のオーナーによれば、関根は川崎重工の経理を担当していたそうで、貨車もソロバンも彼にとっては身近なものだったのだ。ソロバンの絵は壁に横一列に隙間なく並べられているため、全体でひとつの幾何学的抽象画と見ることもできる。おもしろいのは、ソロバンの示す数が、たとえば「1986」とかその作品の制作年になっていること。なるほど、これで「デート・ペインティング」をやればよかったかも。
2012/01/31(木)(村田真)
ハイライン
[アメリカ、ニューヨーク]
マンハッタンにて、高架線跡地を公園にリノベーションしたハイラインを歩く。ディラー+スコフィディオのデザイン、ピエト・オウドルフの造園、高架跡をまたぐホテルなど、さすがにセンスがいい。どうして、こういう洗練された空間が日本にできないのだろうか? またハイラインに沿って、フランク・O・ゲーリーやニール・ディナーリらの幾つかの現代建築、屋外のアートワーク、そして巨大なガゴシアンを含むギャラリー街も見学できる。
2013/01/01(火)(五十嵐太郎)
2013年の初詣でる展
会期:2013/01/01~2013/01/07
CHAPチャプター2[神奈川県]
おもに黄金町界隈で活動する5人の若手アーティストが松の内ノリでやっちゃったみたいなグループ展。鏡開きのための木槌を長さ6メートルに拡大した杉山孝貴、木の壁に暗い色の絵を掛けたのでほとんど目立たない吉本伊織、会期中えんえんとインスタレーションを制作していた山田裕介ら、憎めないアーティストたちによる愛すべき作品。もう少し上を目指そうね。
2013/01/02(水)(村田真)