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2013年12月15日号のレビュー/プレビュー

生誕100周年記念 中原淳一 展

会期:2013/11/09~2014/01/26

高崎市美術館[群馬県]

高崎市美術館の中原淳一展を見る。単に一世を風靡した少女趣味のイラストレータだと思っていたら、実は編集者であり、人形作家であり、ファッションからインテリアまで女性の生活へのさまざまな提言を行なっていた人物だったと知る。戦後すぐの友人を招く少女のための三畳の室内のしつらえなども興味深い。

2013/11/28(木)(五十嵐太郎)

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《旧井上房一郎邸》

[群馬県]

高崎市美術館にある、アントニン・レーモンドの自邸兼事務所を写し、彼のスタイルをとり入れた《旧井上房一郎邸》(1952)は素晴らしい。シンプルな構成で、半世紀を経てもなお瑞々しく、モダニズムと日本の木造建築の開放感を見事に融合している。ちなみに、この住宅は、別の方法によって和洋折衷を行なう中原淳一が精力的に活動したのと同時代だ。

2013/11/28(木)(五十嵐太郎)

KABEGIWA第12回展「掲示」

会期:2013/11/25~2013/12/07

日本大学藝術学部江古田校舎西棟地下1階美術学科彫刻アトリエ前廊下[東京都]

日芸の彫刻アトリエの前の廊下にあるいくつかの掲示板を使った展示。校舎内に入るにはチェックが必要だが、廊下は個々のアトリエより公的性格が強く、不特定多数が行き交う空間。そこにある6面の掲示板がギャラリーだ。これは日芸に勤務する冨井大裕が、「絵画にホワイトキューブは必須か?」との問いにみずから「否!」と答えたうえで、それを検証するために企画したもの。掲示板はキャンバスでいうと300号とか500号の大きさがあり、表面に布が張られ、周囲に枠がはめられている。つまり掲示板自体、絵画形式とよく似ているのだ。なので、参加作家は絵画から出発した6人のアーティスト。絵具てんこ盛りの油絵を出した水戸部七絵は、もっともオーソドックスな展示だが、掲示板に貼り出す物件としては反則並みに出っ張っていた。細長い紙片をハトメで止めていった豊嶋康子は、与えられた掲示板というフィールドそのものを主題としつつ、一部がフィールドをはみ出していた。もっとも感心したのは末永史尚の《掲示》。絵画はひとつのイメージとして把握されるのではなく、さまざまな距離、いろんな角度から見た経験の総体として表象されるものであることを、掲示板に貼ったポスターを距離を変えて撮った写真によって示している。掲示板という与えられた条件を素材と主題に反転させ、なおかつ絵画の本質的な問題にまで迫っている。

2013/11/29(金)(村田真)

アイデアル・コピー《Money(Kyoto)》

会期:2013/11/09~2013/11/30

HAPS(東山 アーティスツ・プレイスメント・サービス)[京都府]

京都市の「若手芸術家等の居住・制作・発表の場づくり」事業で、芸術家支援、地域創造、ネットワークづくりなどのミッションを掲げ、制作に必要な不動産のマッチングや、発表活動にまつわる情報提供、コーディネートなど、アーティストの相談窓口として独自の活動を行なっているHAPS(東山 アーティスツ・プレイスメント・サービス)。そのオフィスは六波羅蜜寺や清水寺といった観光名所も近い東山区の六原学区にある。勉強会やトークイベント、ワークショップ等も開催されているのだが、私はここで定期的に展覧会(ALLNight HAPS。展示時間は19:00~10:00の夜間)も開催されていると今回訪れるまで知らなかった。ギャラリースペースには、通りに面したガラスの引き戸の近くにテーブルがただひとつだけ設置されており、一枚だけ100円玉が置かれているという状態だったので、はじめは気がつかなかったのだが、引き戸のガラスの真ん中には丸い穴が空けられていた。これは以前にも東京で発表されたことのあるアイデアル・コピーによる作品展示で、もともと初日にはテーブルの上に350枚の100円硬貨が載せられていたのだそう。通り(外)からギャラリー内へ手を伸ばせる穴があり、初日には置かれていた350枚がいまは……と会期中の無人の夜間ギャラリーの様子を想像し興奮した。どんなことが起こっていたのだろう。こちらも訪れたのが遅かったのが悔やまれるが、それにしてもなんてスリリングで挑戦的な展示。ユニークなギャラリーで開催される今後の展覧会にも期待したい。


展示風景

2013/11/29(金)(酒井千穂)

いのちのちQII

会期:2013/11/29~2013/12/01

アサヒ・アートスクエア[東京都]

F/T13の公募プログラムで、「いのちのちQII」を観劇。ドッグ・ブリーダーと回転寿司バーを組み合わせ、犬や人間の血統、近親相姦、異種交配をテーマにしたもの。ジョセフィーヌ役の演技と声がパワフルなこと! さらりと語られる下品な言葉や天皇ネタなど、ドキリとさせる展開だが、空間性のある舞台美術もよかった。

2013/11/30(土)(五十嵐太郎)

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