artscapeレビュー
2013年12月15日号のレビュー/プレビュー
真夏の奇譚集
会期:2013/11/29~2013/12/01
もうひとつ公募プログラムでは、台湾のジョン・ボーユエン作・演出の「真夏の奇譚集/シャインハウス・シアター」を観劇。Jホラーの影響を受けた女性像で、現代の都市伝説的なエピソード群だった。が、出所なき噂でなく、体験者への取材をもとにしたものらしい。手持ちカメラで、ライブ投影する演出が効果的である。
2013/11/30(土)(五十嵐太郎)
プレビュー:唐仁原希「キミを知らない。」
会期:2013/12/11~2014/01/11(2013/12/29~2014/01/06休廊)
MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w[京都府]
2011年に京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻(油画)修了。2012年の「京展」では市長賞、京都市美術館賞を受賞、今年は「VOCA展2013──新しい平面の作家たち」(上野の森美術館)の出展など、活躍中の唐仁原希が現在個展を開催している。大きな瞳の少年や少女、擬人化された動物など、寓意と物語に満ちた画面を見ていると、なににインスパイアされるのだろうかと作家本人への興味も掻き立てられる。今展では大作3点のほか、肖像画のシリーズ4点、新作の油彩7点、木炭によるドローイングなどを発表。
2013/12/13(金)(酒井千穂)
プレビュー:夜水鏡みがかず見るよ──死と詩
会期:2013/12/13~2014/01/19(2013/12/23~2014/01/03休廊)
Gallery OUT of PLACE[奈良県]
4名の作家がそれぞれの視点で「死/詩」をテーマに描いた作品を発表する。出展作家は井上光太郎、田中秀介、徳田奈穂子、林圭介。今展では「死」という強力な言葉を「詩」としてもとらえている。普遍的なものでありながら、じつは誰も実体験として語ることはできない「死」。各々の作品は、そのパラドックスになぞらえたという展示法で設置される。今展の回文タイトルもさることながら「あちら側」、「こちら側」、その「境界」という言葉を通じていろいろな連想を喚起しそう。12月24日には今展の関連イベントとして、ゲストに半井洋三(陽明学研究家)、森田進(建築家)を迎えてのトークイベントも開催される。こちらも面白そうだ。
2013/12/13(金)(酒井千穂)
カタログ&ブックス│2013年12月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
「夏の家」についての覚書
東京国立近代美術館は、2012年、開館60周年記念事業の一環として、美術館前庭の芝生にあずまやを設置し、憩いの場として約8カ月間開放する建築プロジェクト「夏の家」を企画・実施しました。設計・施工を依頼したのは、世界の注目を集めるインドの建築集団スタジオ・ムンバイ。本書は、2012年8月26日-2013年5月26日まで9カ月間公開された「夏の家」が生まれた背景から、つくられる過程、そして、どのように使われたのかを記録・報告するものです。(番外編として2013年7月に石巻へ移設された様子も収録)
[東京国立近代美術館「夏の家(仮)ブログ」より]
ブルーノ・タウトの工芸──ニッポンに遺したデザイン
2013年12月6日(金)〜2014年2月18日(火)の期間、大阪・梅田のLIXILギャラリー大阪会場にて開催される「ブルーノ・タウトの工芸〜ニッポンに遺したデザイン〜展」のカタログ。
本書では、まずタウトデザインの工芸品を、益永研司氏の撮りおろしの図版でたっぷりと紹介。タウトの建築になぞらえて、鮮やかな色彩空間で捉えた工芸品の数々は、これまでとは違う新たな表情を醸し出す。また、日本で唯一の弟子とも呼ばれた故水原徳言氏が記した文章を、当時の記録写真や解説を交え掲載、タウトの日本滞在時の素顔や実情を細かく伝える。また、タウトの日記や記録などもひも解きながら、尊重していた日本文化とは何かも探る。さらに論考では、彼のベースとなる建築作品と貫かれた思想を紹介し、そこから見える工芸の世界観を詳らかにする。当時の日本の工芸やデザインに一石を投じたタウトの視点に迫る一冊。
[LIXIL出版サイトより]
食と建築土木──たべものをつくる建築土木(しかけ)
食べものの生産・加工のために用いられてきた農山漁村の23の建築土木を、多くの写真とともに紹介します。
たとえば宇治の茶農家が冬期に柿を干すために組み立てる巨大な柿屋、遠州灘沿いの砂丘地帯に畑地を確保するべく作られる砂防のための仮設物、長崎県西海町の海岸沿いの崖に連続して突き出す棚状の大根櫓など。これらの不思議な構築物は出自も定かでなく、永続的なかたちを持たないため、これまであまり注目されることがありませんでした。しかし一方で人々の暮らしの営みと一体になったこれらの建築土木(しかけ)は、地域の風土や人間の知恵を伝え、魅力的な固有の風景を形づくり、私たちに今日の建築や食、そして文化のあり方について問いかけてくるのです。
[LIXIL出版サイトより]
藤森照信、島村菜津の対談や大江正章、松野勉によるコラムも収録。
超域文化科学紀要 第18号 2013
超域文化科学専攻所属教員と学生による研究論文集。比較文学比較文化、表象文化論、文化人類学という3つのコースが、それぞれのアプローチの特徴を生かし、様々な文化的・社会的現象を分析する場である。掲載される論文は、本専攻所属の教員による厳格な審査を経ている。
[東京大学大学院総合文化研究科サイトより]
ファッションは魔法
ファッションの魔法を取り戻す。1秒でも着られれば服になり、最大瞬間風速で見る人を魅了し世界を動かす。物語を主人公に巨大な熊手のコスチュームで秘境の祭りを出現させる山縣。ファッションショーと音楽ライブを合体させ、アニメやアイドルを題材に日本の可能性を探る坂部。「絶命展」でファッションの生と死を展示して大反響を呼び、自らのやり方でクリエイションの常識を覆してきた2人の若き旗手が、未来の新しい人間像を提示する。「これからのアイデア」をコンパクトに提供するブックシリーズ第9弾。画期的なブックデザインはグルーヴィジョンズ。
[朝日出版社サイトより]
新しい広場をつくる──市民芸術概論綱要
ある種の芸術になぜ助成金を出すのか。経済政策では解決しきれない停滞のなかでどう生きていくのか。被災地が復興し、疲弊した地方が自立するためには何が必要か。社会的弱者、文化資本の地域間格差など、諸問題に芸術・文化が果たす役割を深く問い、社会的包摂を生み出す「新しい広場」の青写真を描く文化論的エッセイ。
[岩波書店サイトより]
2013/12/16(月)(artscape編集部)