2018年06月15日号
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artscapeレビュー

森山大道「LABYRINTH」

2012年11月15日号

会期:2012/09/28~2012/11/11

BLD GALLERY[東京都]

「これは反則ではないのか」と言いたくなるような、面白い展示だった。フィルムのコマをそのまま焼き付けたコンタクト・プリント(密着印画)を見せることは、写真家にとっては勇気がいることだと思う。彼がどんな対象に向けて、どんなふうにシャッターを切っているのかが、一目瞭然になるからだ。それでも森山大道ぐらいになると、コンタクト・プリントを人目にさらすことになんの躊躇もなく、むしろそのことを愉しんでいるようでもある。
今回展示されたのは104×144.4�Bのサイズに大きく引き伸ばされたコンタクト・プリント(写真弘社によるバライタアートプリント)で、そこにぎっしりと森山の旧作が詰まっている。しかも、そこでは1960年代から2000年代までの写真が、年代を飛び越えて、アトランダムにコラージュされて並んでいるのだ。『にっぽん劇場写真帖』(1968)、『狩人』(1972)、『写真よさようなら』(同)から『光と影』(1982)、『サン・ルゥへの旅』(1990)を経て『新宿』(2002)、『Buenos Aires』(2005)まで、つい写真集で見慣れたイメージを探してしまうのだが、それが目に入ってきたとき、軽いショックに襲われてしまう。前後の画像とのかかわりによって、そのたたずまいが相当に違っているのだ。さらにトリミングや焼き込みのような暗室技術を駆使することによって、森山がいかに魔術的な画像操作を行なっているのかが、まざまざと見えてくる。コンタクト・プリントをあらためて確認することで、森山の写真を形づくっている地層のような構造が浮かび上がってくるのだ。まさにスリリングな展示と言えるだろう。
なお、展覧会にあわせて写真集『LABYRINTH』(AKIO NAGASAWA PUBLISHING)も刊行された。300ページを超えるイメージの迷宮。これまた、ページをめくる手が止まらなくなるほどの異様な面白さだ。

2012/10/08(月)(飯沢耕太郎)

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