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『ニッポンの、みせものやさん』試写

2012年10月15日号

会期:2012/09/28

TCC試写室(2012年12月から新宿K's cinemaにて上映)[東京都]

江戸後期には300軒、昭和なかばにも48軒残っていた見世物小屋もいまや1軒を残すのみとなった。その1軒、大寅興行社を奥谷洋一郎監督が10年にわたり追いかけたドキュメンタリー。情報社会の発達とともに身体性が希薄になり、不気味さやうさん臭さの消えていくこの世の中では(別の不気味さやうさん臭さは生まれるが)、たしかに見世物小屋の生き残る余地は少ない。でも逆に、だからこそヘビを食ったり火を吐いたりする人間のナマの身体性を再確認する必要があるだろう。似たようなことは美術にもいえるはずだ。高齢化が進み絶滅寸前となった悲哀感漂う見世物小屋の芸人たちと、まるで緊迫感のない監督のユルい語りが残酷なまでに時代のギャップを浮き彫りにする。

映画『ニッポンの、みせものやさん』特報

2012/09月28日(金)(村田真)

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