artscapeレビュー
第97回二科展
2012年10月15日号
会期:2012/09/05~2012/09/17
国立新美術館[東京都]
夏も終わり、芸術の秋は二科展とともにやってくる……なーんてね。なぜぼくは毎年のように二科展に足を運ぶのか。はっきりいって最初は嘲笑うためだった。見なければ嘲笑えないもんね。ところが最近は二科展を見ながら新しい才能、未知の表現、現代美術にはない魅力を探している自分に気づく。そして、恐ろしいことに、自分も出してやろうかと思ったりもする。ミイラ獲りがミイラになりかねない。さて今年も数百点の駄作の山のなかから、傑作とはいえないまでもひと味違った絵をピックアップしてみよう。二科展に限らず公募団体展ではどれもこれも似たようなサイズのキャンヴァスに同じような額縁をつけて出品するものだが、ひとり長谷川正義は8号程度の小品を出していた。これは逆に目立つ。山岡明日香は既製のキャンヴァスではなく厚さ10センチほどの額縁なしの絵を出品。これも右へならえばかりのキャンヴァス画のなかで文字どおり突出している。桝井絢美は黒い画面に白いチョークみたいな線でドローイングを描いている。これもよく入選したもんだと感心する。できれば本物の黒板にチョークで描いてほしかったなあ。会期中チョークを置いといて観客が自由に描けるようにすれば画期的だし、終われば消して翌年また描き直せば安上がりだし。二科展には意外な発想源がころがっている。
2012/09/07(金)(村田真)