artscapeレビュー

「自作自演」リーディング 西村賢太×本谷有希子

2012年10月15日号

会期:2012/09/08

東京芸術劇場[東京都]

東京芸術劇場の東京福袋にて、西村賢太×本谷有希子の作家リーディングと対談を見る。初対面らしいが、好対照の二人で、面白い企画だった。俳優でもなく、読むプロのアナウンサーでもなく、作家本人が自分の書いたテキストを読む、というのは、どのように執筆していたのかを想像させて興味深い。本谷有希子は短編集『嵐のピクニック』から、カーテンの膨らみが気になりだす「私は名前で呼んでいる」と笑える「Q&A」を読む。いずれもだんだん語り手の素性が明らかになると同時に、小さな始まりが異様な事態にドライブしていく。朗読するときの間のとり方は、リズム感があって、やはり演劇をやっている人だ。一方、西村賢太は、『人もいない春』からの抜粋を朗読した。言うまでもなく、これも自分を重ねあわせた私小説である。狭い椅子で苦しそうに、途中で幾度か中断しながら、慣れない朗読を行ない、それ自体がパフォーマンスになり、ひとつのキャラとして成立している。彼の長いセンテンスの文章は、朗読には向かず、黙読的なのがよくわかる。

2012/09/08(土)(五十嵐太郎)

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