artscapeレビュー

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2012年10月15日号

会期:2012/05/12~2012/09/16

ゲント中心街[ゲント(ベルギー)]

小雨のなか中心街の展示を見る。ビルの空室や廃屋を中心に、広場、教会、路上などさまざまな「隙間」にアートを侵入させている。庭園に長大な本棚を設けて貸し借り交換自由の図書館をつくったマッシモ・バルトリーニ、運河の交わる円形の池の側壁にファヴェーラを張りつけた川俣正、集会場の建物を縮小した家をツリーハウスのように樹上に置いたBenjamin Verdonck、天井の高い元ボクシングジムの室内いっぱいに廃材による巨大なインスタレーションを展示したPeter Buggenhout、廃虚化した貴族の館に住み込み、粘土でこしらえた人物彫刻を家具とともにインスタレーションしたマーク・マンダースなど。やはり映像とか言葉を使ったコンセプチュアルな作品は目立たず、スケールの大きな建築規模の作品や、その場所全体を作品化するようなインスタレーションが印象に残った。なかにはどれが作品なのかわからなかったり、すでに破壊された作品もあり(Ahmet Ogutのバルーンの作品は3回狙撃されて展示不可能となった)、それらを探しまわる苦労も含めて楽しむことができた。やっぱり街にアートを出すなら、反対でもいいから住人のリアクションがあったほうがいい。リアクションがあれば議論が始まり、反対した人たちも賛成に回る可能性があるからだ。いちばん困るのは無視されること。だから知らんぷりしたり無関心を装ったりする人が多い日本では、こういう野外展はとてもやりにくいと思う。


Benjamin Verdonck, Vogelenzangpark 17bis

2012/09/14(金)(村田真)

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