artscapeレビュー
カタログ&ブックス│2012年10月
2012年10月15日号
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
山と森の精霊 高千穂・椎葉・米良の神楽
2012年9月7日より、LIXILギャラリー大阪、ギャラリー1(東京)を巡回する「山と森の精霊 高千穂・椎葉・米良の神楽 展」カタログ。20年以上にわたって宮崎の神楽を調査・研究している高見乾司氏の解説とともに、3地域の神楽の特徴を臨場感溢れる図版で展開。また、神に扮する際に纏う仮面を、九州民俗仮面美術館のコレクションから40点を厳選し紹介する。論考では、仮面考ほか、神楽の中で生き続けてきた神々の姿について、また全国の神楽を行脚した著者による宮崎の神楽の特徴について考察する。最後に11名によるインタビューから神楽を次世代へと伝える人々の思いを紹介する。宮崎の風土を大きな舞台に、自然と密接した暮らしの中で受け継がれてきた精霊との交流のあり方をこの一冊から届ける。[LIXIL出版サイトより]
リトルプレス「Temporary housing + shelter」
2011年、ともに大きな地震に襲われたニュージーランドと日本。両国でそれぞれ出版プロジェクトを行なう split/fountainとWhatever Pressが、企画・編集チームとしてコラボレートし、'Temporary housing + shelter'というテーマで世界各国20人以上のアーティスト、建築家、デザイナー、ライターたちの作品を一冊にまとめた。この冊子自体をもまたテンポラリな家と見なし、本のあり方・つくり方自体を形式的にゼロから根本的に考え、つくり上げた一冊。印刷に対しても実験的に向き合い、ローレゾリューション形式であるリソグラフ印刷をあえて採用している。デザインは、オランダのコンテンポラリーデザインの震源地、ヴェルクプラーツ・タイポグラフィ出身の気鋭のデザイナー・ライラTC。日本語タイプセットは、同校卒の木村稔将が担当。英語翻訳はAi Kowada Gallery所属の現代アーティスト、ミヤギフトシ。10月現在、初版完売のため、二刷りを11月以降に増刷予定。
アート・ヒステリー──なんでもかんでもアートな国・ニッポン
「アート=普遍的に良いもの」ですか? そこから疑ってみませんか? と「アート」の名のもとに曖昧に受け入れられ、賞賛される現在の日本社会に疑問を投げかける評論集。近代から現代にかけての日本美術が社会にどのように受け入れられてきたのか歴史・教育・ビジネスなどの視点から「アート」を問う。ピカソやデュシャン、岡本太郎、村上隆からクリスチャン・ラッセン、Chim↑pomなどさまざまなアーティストやストリートアートなどが取り上げられている。
現代建築家コンセプト・シリーズ12
石川初 | ランドスケール・ブック ― 地上へのまなざし
近年、東京という都市のなりたちを100万年の単位でとらえ、足下の地形への感覚を新鮮に甦らせる仕事が注目を集めている。また、その地形の上に立つ「団地」や「工場」「巨大ジャンクション」など、近代都市の営みを愛おしむまなざしが共感を呼んでいる。これらは私たちに21世紀的な都市の見方、感じ方、楽しみ方を提示し、その上に建つ建築のあり様をも問いかける。本書では、ランドスケープアーキテクト石川初のフィールドワークの視点を紹介。私たちが日常を過ごしている街、行ったことのある都市、知っている世界も視点やスケールを変えて見ると、そのたびに鮮やかに、異なる姿をして現われる。「地形」「地図」「時間」「境界」「庭」のキーワードをもとに、都市の新しい読み解き方や発見の方法を探る一冊。[LIXIL出版サイトより]
現代建築家コンセプト・シリーズ13
吉村靖孝 | ビヘイヴィアとプロトコル
建築基準法を遵守するあまり街並から浮いてしまった建物や、コンテナを建築に活用する事例の収集など、若手建築家・吉村靖孝は、建築の社会的な成り立ちを問い直し、社会に関わる方法の観察と分析を行なってきた。そして現在、社会構造とそれにともなうクリエイティヴ環境の激変にともない、建築・空間は、日常生活の機微(ビヘイヴィア)を手がかりにするだけでは成立せず、規制、法、労働力、市場、流通、ローンなど、広域的で外部的なマニュアル(プロトコル)を通観しなければならない状況に直面している。吉村は、いまこそ両者の対立と矛盾を丁寧に取り除き、大胆に架橋していく可能性を示す必要があるという。多数の自作アイディアとともに、建築・都市に参入する新しい建築家像を示す一冊。[LIXIL出版サイトより]
2012/10/15(月)(artscape編集部)