artscapeレビュー
『会田誠ドキュメンタリー──駄作の中にだけ俺がいる』
2012年10月15日号
会期:2012/09/04
映画美学校試写室[東京都]
この秋、森美術館で大規模な個展「天才でごめんなさい」をひかえた会田誠のドキュメンタリー映画。2009年から約1年間、北京のアトリエと首都圏の自宅やギャラリーを行き来する会田を追っているのだが、そのあいだしこしこと制作を続けていたのが、30人以上の水着姿の女子高生を大画面に詰め込んだ《滝の絵》と、数百人のサラリーマンの山を描いた《灰色の山》。どちらも超大作なのでなかなか完成せず、酒やタバコを飲みながらグチをこぼし、自分に言い訳しながら進めていく様子が描かれている。彼にはいささか自虐的、露悪的なところがあるが、それは自分の才能や立ち位置をよくわきまえていることの裏返しともいえる。だいたい絵がうまいということは単に描画テクニックに長けているというだけでなく、物事の本質を的確につかむ能力があるということなのだ。その点まさに会田は「天才」である。でなければ「駄作の中にだけ俺がいる」なんていえないだろう。監督はおもにテレビのドキュメンタリー番組を手がけてきた渡辺正悟。ひとつ意外だったのは、ナレーションで語られる「私」の主語が妻の岡田裕子であること。つまりこの映画は妻の視点で見られ、語られた会田誠なのだ。
[ユーロスペースほか、2012年11月10日(土)~]
2012/09/04(火)(村田真)