artscapeレビュー
ヤン・ファン・エイク《ファン・デル・パーレの聖母子》
2012年10月15日号
グルーニング美術館[ブルージュ(ベルギー)]
午後から電車で30分ほどのブルージュへ。以前訪れたときより駅周辺は整備され、旧市街もチョコレートやレースなどの土産物屋ばかりが目につくようになったが、そんなの関係ねえ。ここへ来た目的はただひとつ、ファン・エイクの《ファン・デル・パーレの聖母子》を見ること。前回はグルーニング美術館が改修工事中で《ファン・デル・パーレ》はメムリンク美術館に仮展示されていたが、今回は新しい美術館のなかでのご対面となる。この絵は聖母子を中心に、左右にこの絵の依頼者ファン・デル・パーレや聖人たちを描いた幅170センチを超す油彩画の大作。これも細部の描写が見事で、右側の聖ゲオルギウスの甲冑や、左側の聖ドナトゥスの衣装の金の刺繍、床に敷かれた幾何学模様の絨毯、背景の円形のパターンのガラス窓など、あらゆる材質の質感が完璧に描き分けられている。これが油彩画の最初にして最高の到達点であることは間違いない。この美術館は小規模ながらもファン・エイクのほか、ファン・デル・ウェイデン、ハンス・メムリンク、ヒエロニムス・ボスらオールドマスターズを中心に、世紀末芸術や現代美術までひととおりそろっていた。
2012/09/15(土)(村田真)