artscapeレビュー
進藤環「Late comer」
2012年10月15日号
会期:2012/09/20~2012/10/08
hpgrp GALLERY TOKYO[東京都]
進藤環も着実に自分の作品世界を深めつつあるひとり。自作の写真プリントを切り貼りしながら、カラーコピーを繰り返して、不思議な磁力を発する「風景」をつくり上げていく──そのスタイルはほぼ完成の域に達していると思う。昨年に引き続き原宿・表参道のhpgrp GALLERY TOKYOで開催された今回の個展では、モノクロームのプリントの比率が増え、よりピクトリアル(絵画的)な要素が強まってきている。さらに、植物や森などに加えて、岩、水、さらに建物のような人工物なども画面に配されるようになり、「風景」の骨格とでもいうべき要素がくっきりとあらわれてきた。彼女が旺盛な表現意欲で、新たなチャレンジを繰り返していることが伝わってくる展示だった。
ただ、このカット・アンド・ペーストの手法も、繰り返しているうちに、そろそろヴァリエーションが出尽くしてきているようにも見える。展示作品のなかに1点だけ技法に「鉛筆」と記されたものがあり、異彩を放っていた。次はもっと違う画像構築のシステムにも取り組んでもらいたいものだ。また、画面のスケール感についても、そろそろ考えなければならない時期にきているのではないだろうか。小さくまとめるのではなく、観客を圧倒するような巨大な作品も見てみたい気がする。そのときはじめて、作者にとっても見る者にとっても、予想をはるかに超えた「記憶や知識と、名もない場所が混在し立ち現れる風景」が姿をあらわすのではないだろうか。
2012/09/20(木)(飯沢耕太郎)