artscapeレビュー
リー・ミンウェイ展「澄・微」
2012年10月15日号
会期:2012/08/28~2012/10/21
資生堂ギャラリー[東京都]
台湾生まれ、アメリカで美術を学んだアーティストによる個展。大きなギャラリーには、縁台の上にヒモで結んだ木箱が16点置かれている。縁台に上がり、ヒモを解いてフタを開けると着物がたたんである。公募で集めた布製品を、それにまつわる思い出とともに収めたもの。これは、母の縫った上着を着ることで幼稚園に行く勇気が出たという作者の幼いころの思い出が発想の原点になっているらしい。小さいギャラリーには小屋を建て、なかに机と筆記具を置き、観客が思いを伝えたい相手に手紙を書けるようにしている。封をしない手紙は壁のラックに差し込んでおけば別の観客に読んでもらえるし、宛先を書いて封をした手紙はスタッフに渡せば投函してもらうことができる仕組み。どちらもひと昔前に流行した観客参加型のコミュニケーションアートといえるが、まだこういうことやってるアーティストがいるんだあというのが正直な感想。古い新しいはともかくとして、ぼくは参加したいとは思わないなあ。他人の思い出がつまった布製品なんて興味ないし、画廊回りの途中でだれかに手紙を書きたいとも思わないし。まあ個人の好きずきですが。
2012/09/28(金)(村田真)