artscapeレビュー

ドクメンタ13

2012年10月15日号

会期:2012/06/09~2012/09/16

カッセル市街地[カッセル(ドイツ)]

今日は肌寒い小雨のなか、市街地に点在する作品を訪ね歩く。デパートの上階の空きフロアにスピーカーを置いて鼓動のようなリズムを響かせるCevdet Erekのサウンドインスタレーション、ハードカバーの本を開いて表紙と裏表紙をキャンヴァス代わりに絵を描いたPaul Chanの絵画、廃ビルに住み込み建具を使って建物内全体を模様替えするTheaster Gatesのインスタレーション、真っ暗な部屋から歌声が聞こえるので近寄ってみると生身の人間が歌ってるというティノ・セーガルのパフォーマンス、崖の下に掘られた防空壕のなかをヘルメット着用で歩かせるAman Mojadidiの体験型作品、サロンのような吹き抜けの部屋にアフガンの山々の絵を飾ったタシタ・ディーンの黒板絵など、意欲的で見ごたえのある作品が多い。感心したのは、作品の多くに「Commissioned by dOCUMETA13」と表示されていること。つまり既製の作品ではなく、今回のドクメンタのために委託制作されたオリジナルということだ。これは国際展なら当たり前と思うかもしれないが、世界中に国際展が林立するようになった昨今(とくに日本では)既製作品を持ってきて展示するだけの手抜きが少なくないのだ。また今回は、ドクメンタの成り立ちやフリデリチアヌム美術館の過去、カッセル市史などを参照した自己言及的な作品が少なからず見られたことも付け加えておきたい。ちなみに毎回ドクメンタはロゴを変えるが、今回はいつもと逆に頭文字が小文字であとは大文字になっている。勝手に解釈すれば、これまでのドクメンタとは正反対を向いているという意思表示か。いずれにせよ今回は意気込みが違う。


Tacita Dean, Fatigues

2012/09/11(火)(村田真)

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