artscapeレビュー

Work in progress 2012

2012年10月15日号

会期:2012/09/14~2012/09/28

MATSUO MEGUMI +VOICE GALLERY pfs/w[京都府]

京都精華大学大学院芸術研究科版画コースの有志(在学生や修了生)による展覧会。版画作品といっても、版という概念自体を広く、多義的にとらえるもので、会場にはいわゆるスタンダードな版画のイメージの作品から写真やコピー、絵画の手法を用いた作品まで、それぞれの解釈で制作されたさまざまな作品が展示されていた。出品者の人数も多かったのだが、あまりにも多様な表現内容で少し戸惑った。版画という表現の広い解釈の可能性には面白さも感じるのだが、その分、なにが版画や版なのか、作家のこだわりやねらいはどこにあるのか理解し難いものもある。展示を見ただけではやや消化不良の思いもしたのだが、それが少しスッキリしていくようだったのが、その直後に会場で開催されたアートライターの小吹隆文さんとギャラリーオーナーの松尾惠さんによるトークイベント。その場にいたのはほとんどが今展に出品していた学生だったと思われるが、「版」という概念の指摘も踏まえたうえで各出品作家の表現の個性や魅力が引き出されたトークは、工芸と美術、現在の表現やアートシーンにも触れる幅広い内容でたいへん興味深く、なによりもこれから独自の世界を目指す(だろう)若い作家達への温かい眼差しがいっぱいに感じられるもので打たれるような思い。ここにいた学生たちが羨ましいほどだった。

2012/09/21(金)(酒井千穂)

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