2022年07月01日号
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artscapeレビュー

松延総司「棚/SHELVES」

2013年06月15日号

会期:2013/04/25~2013/05/19

LABORATORY[京都府]

松延総司が久しぶりに個展を開催していた。これまでも、ミニマルな表現でモノの機能や存在にアプローチするインスタレーション作品を発表してきた作家だ。今回は「機能を持つものから機能をはぎ取ったとき、その後に何が残るのか」というテーマのもと、“実験的な棚”を展示するとフライヤーに記されていて気になった。綺麗に組み立てられているが、6面とも板で塞がれた箱状の“棚”、しきり板がすべて斜めになっている“棚”、知恵の輪のように組み合わされた“棚”など、会場には数点の木製の“棚”が展示されていた。当然ながらそれらは正確には“棚”ではなく目的を持たないオブジェだと言える。ただそれだけ、といえばそうなのだが、面白いのは松延の視点。今展のステイトメントには「棚になる可能性を持つものは星の数ほどあるかもしれないが、そこにモノが置かれない限りそれは棚ではない」という作家のコメントもあった。私たちは、モノを前にして、その機能を知らずにはその存在にも無関心になることができない。いつもそこにあるモノの存在を当たり前に措定し、無関心でいられるのは、機能を理解しているからこそだ。それは人間の動作、行為の延長上にある知覚だから、逆に言えばモノもまた、その存在に人間的な意味をもっている。その存在だけを抽出した松延の“棚”は、翻って人間の行為や私自身の存在を鏡合わせのように意識させる。連想を掻き立てる表現がスマートだった。

2013/05/16(木)(酒井千穂)

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