2022年05月15日号
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artscapeレビュー

齋藤陽道「せかいさがし」

2013年06月15日号

会期:2013/05/18~2013/06/02

青山ゼロセンター[東京都]

2010年に写真新世紀優秀賞受賞(佐内正史選)、2011年にはデビュー写真集『感動』(赤々舎)を刊行と、齋藤陽道の写真は聾唖者というハンディキャップを超えて、少しずつ、だが確実に共感の輪を広げつつある。今回の青山ゼロセンターでの個展「せかいさがし」を見ると、その作品世界がさらに深まり、強い説得力を持ち始めていることがわかる。
2階の展示会場に新作の「せかいさがし」が16点、1階に岩崎航の詩とコラボレーションした「点滴ポール」が9点、さらに奥の部屋では「せかいさがし」と前作の『感動』からピックアップした作品78点によるスライドショーが上映されていた。そのなかでは、特にスライドショーがよかったと思う。といっても、特別に趣向を凝らしているわけではなく、写真がぼんやりと現われては、次の写真と重なり合うようにして消えていくだけだ。音楽や音は一切ついていない。その写真と写真の継ぎ目(間)の部分が目に残る。映像がひと時も留まることなく現われては消えていく様を見続けていると、齋藤が「せかい」に向けたイノセントな眼差しに次第に同化していくように感じる。
「じっくりと時間をかけてみる。
見る。ぼくは見てきた。
なにを。せかいだよ」
彼の純粋な感動が目の前の対象に注ぎ込まれ、それをしっかりとつかみ取りたいという衝動に結びついていく。光、子ども、植物、街の一隅、写っているのはごく些細なものだが、それ自体に凛とした存在感がある。そのイメージ定着のプロセスが、スライドショーによって追体験できるような気がしてくるのだ。写真作品の見せ方としては、スライドショーはあまり人気がないようだが、まだまだいろいろな可能性を持つメディアではないだろうか。普通の2階建ての家を改装した展示スペースの雰囲気もとてもよかった。ただ残念なことに、会場の青山ゼロセンターは、この齋藤の展覧会でクローズしてしまうという。ホワイトキューブのギャラリーにはない、温かみのあるいいスペースなのだが。

2013/05/18(土)(飯沢耕太郎)

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