2022年05月15日号
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artscapeレビュー

極限芸術──死刑囚の表現

2013年06月15日号

会期:2013/04/20~2013/07/21

鞆の津ミュージアム[広島県]

瀬戸内の名勝地・鞆の浦にある鞆の津ミュージアムは、東京人からすればかなりの難所だ。しかも今日は呉からなので、いったん広島に戻って新幹線で福山に行き、そこからバスで30分以上揺られなければならない。幸い待ち時間は少なかったが、それでも2時間以上かかった。このミュージアムもそんな利用者の不満は百も承知で、同展チラシには「来るなら来い!」と見得を切っている。いいなあこういう態度。建物は築150年の蔵を改装したもので、既存の美術の外側で表現してきた「アール・ブリュット」をはじめとする作品を紹介する場所らしい。なにしろ死刑囚の絵が見られるという以外なにも知らずに来てしまったのだ。今回は開館1周年ということで企画されたもので、約300点の死刑囚の絵が集められている。以前、東京の画廊で見たときはこんなたくさんなかったが、近年ある篤志家が出資して希望する死刑囚に絵を描かせるようになってから増えたという。展示はいきなり和歌山毒物カレー事件の林眞須美の絵から始まる。黒を背景に赤で涙と目隠し布らしきものを表したシンボリックな《国家と殺人》と題する絵。林はほかにも青い正方形のアド・ラインハートのような抽象画や、娘と息子を両脇に抱いた母子像、ピカソ風の人物画などスタイルの異なる8点の絵を出していて、なにを考えているのかわからずちょっと不気味。わかりやすいのは、神や仏や家族を描いた悔悟の念を感じさせる絵や、おいしそうなお弁当や女性ヌードなど、もはや叶わぬ欲望を描いた絵の類だ。おそらく彼らはこれらの絵をいつも「最強の絵」として描いているに違いない。考えてみればこれは表現する者にとって壮絶な試練だ。

2013/05/24(金)(村田真)

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