artscapeレビュー

イキウメ「獣の柱 まとめ*図書館的人生(下)」

2013年06月15日号

会期:2013/05/10~2013/06/02

シアタートラム[東京都]

世田谷シアタートラムにて、イキウメの演劇『獣の柱』を観劇する。SF的な設定が抜群に面白い。謎の隕石の飛来、そして世界各地のテロが幕開けとなって、人が集まる都市に、空から降ってくる巨大な柱。高さ300m、直径30m。それを見るものは多幸感に囚われるが、あまりの過剰さゆえに、人々は思考と動作を停止し、第三者に止められない限り、硬直したまま死に至る。仮に止められても、見ているあいだの記憶を失う。長い年月を経て、人類に厄災をもたらす、圧倒的な光の柱は、普段は隠される宗教的な崇拝物になっていく。支配されながら、共存するか、あるいは都市とは異なる自給自足による別の生き方を選ぶか。いろいろな解読が可能だが、筆者には事故を起こした原子力発電所の寓意のように思えた。ちなみに、この柱は、2010年前後に出現したという設定になっている。

2013/05/30(木)(五十嵐太郎)

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