artscapeレビュー
フィギュア誕生30周年「海洋堂フィギュアワールド」
2013年06月15日号
会期:2013/05/02~2013/05/07
東急東横店西館8階催物場[東京都]
東急東横線の渋谷駅が廃止されたと思ったら、東急東横店の入口も閉鎖されてるではないか。50年前から変わらぬ渋谷駅を知ってる者としては寂しい限り……と思ったら、閉館したのは東館だけで、西館はまだ現役ピンピン。ってほどでもないけど、海洋堂のイベントをやっていたので行ってみた。海洋堂のフィギュアで思い出すのが、レオナルドとミケランジェロが繰り広げたといわれる「絵画と彫刻、どっちがエライ?」論争だ。ミケランジェロが「絵画はイリュージョンにすぎないけど、彫刻は実在だぜ」とケンカ吹っかけたのに対し、レオナルドは「彫刻は奥行きや状況描写ができないけど、絵画ならできるもん」と答えたという。本当にあったかどうかもわからない論争だが、海洋堂のフィギュアはレオナルドの反論に対する反証になっているように思えるのだ。まずフィギュアは、2次元でしか表わせなかったキャラクターの画像を、かなり強引に3次元に起こしてみせた。いってみれば多焦点的なピカソの絵を立体化したようなもんだ。さらに海洋堂は踏み込んで、火や水といった流動物の固定化や、遠近感をともなう背景描写、動きや変化などの時間表現までちっちゃなフィギュアに採り込んでしまう。レオナルドをして彫刻には不可能だといわしめた状況描写を、海洋堂はいともたやすく(でもないだろうけど)フィギュアで実現してみせたのだ。ぼくがフィギュアに関心をもつのはその1点のみだ。
2013/05/04(土)(村田真)