artscapeレビュー

山添潤「彫刻展」

2013年06月15日号

会期:2013/05/07~2013/05/19

Gallery PARC[京都府]

山添潤の石彫の個展。山添は具体的なモチーフや完成のイメージなどを目指さず鑿(のみ)や鏨(たがね)で石を打つという作家で、制作や発表はおもに関東をベースにしているが、これまで関西でもたびたび作品を発表してきた。今展では、会場の展示空間をイメージしながら制作したという6本の石柱と、7つの石彫、鉛筆によるドローイングなどが展示された。入口から飛び石のようにスペースを空けて配置された6本の石柱は、形もさることながらそれぞれに鑿の痕の表情も異なり、どれも躍動感があるのだが神秘的な雰囲気にも包まれている。近づいて夥しい鑿の痕を見ていると、作家の手の動き、石を打つ強さ、そのピッチ、石と向き合う姿などさまざまな制作の時間を連想し、ただ素直に感動してしまうのだが、離れてみるとまた別の趣きがあり、ある風景のなかの雄大な時間や自然現象を思わせて不思議だ。ガラス張りの空間に射し込む光がいっそうその佇まいを力強く優美に見せていて印象に残る展覧会だった。

2013/05/18(土)(酒井千穂)

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