2019年08月01日号
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artscapeレビュー

西宮正明 映像言語展

2010年05月15日号

会期:2010/04/01~2010/05/15

キヤノンギャラリー S[東京都]

西宮正明は1933年生まれで、日本広告写真家協会(APA)元会長、名古屋学芸大学メディア造形学部教授。写真界の重鎮といえるキャリアだが、その精神は若々しく、いまなおアーティスト魂がたぎっている。今回の「西宮正明 映像言語展」でも「フィルム粒子とピクセルの共棲」という興味深いテーマに真っ向から取り組んで、面白い展示を見せてくれた。
西宮は1960年代から、モノクローム・フィルムの増感現像による粗粒子表現に魅せられてきた。印画紙にプリントされた「フィルムの粒子は存在感豊かに限りなく美しい」ということだ。ところが、90年代後半から1億5千万画素というスキャナー式のハイエンド・デジタルカメラを使いはじめて、あらためてその表現の可能性に気づいたのだという。デジタルカメラで複写してプリントアウトすると、フィルムのざらざらの粒子がよりくっきりとシャープに見えてくる。しかもその粒子は、大きく拡大しても最後まで個性的なフォルムを保つ。つまり「フィルムとデジタルを共存させる」ことで、フィルム粒子の情報量をさらに引き出すことができるというわけだ。
このもくろみは、今回の展覧会で見事に成功したのではないだろうか。特に拡大を続けて、不定形なフィルム粒子が「風呂屋のタイル」のようなピクセルの集合に変わってしまう、その境界を見きわめる試みがスリリングだった。部屋の片隅に射し込む光や日常的なオブジェを撮影したスティル・ライフ(静物)の作品自体も、練り上げられた画面の構成力を充分に発揮した、見応えのある力作である。

2010/04/05(月)(飯沢耕太郎)

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