artscapeレビュー

2010年05月15日号のレビュー/プレビュー

霞 -kasumi- 「伊吹拓×佐野真弓:絵と音の作品展」

会期:2010/03/09~2010/03/14

SEWING GALLERY[大阪府]

昭和20年代に建てられた洋裁学校の古い校舎内にあるギャラリー。1,000坪の広大な敷地には桜をはじめさまざまな植物が生い茂っていて、なんだか絵本のように素敵なところだ。伊吹拓の絵画が展示されたこの洋裁学校の空間で、ピアノとバイオリンのコンサートが行なわれた。古い校舎に響く音色も素晴らしかったが、日々、刻々と変化する光の表情、自然の現象を描いた色彩とその抽象のイメージが会場の外の景色と重なっていくようで快感。目に見えない(見えにくい)「存在」の発見を喚起する、伊吹さんの作品はいっそう魅力を放っていた。

2010/03/17(土)(酒井千穂)

プレビュー:「ロゴパグ~不思議なスパイス~」森田麻祐子・中村協子二人展

会期:2010/05/14~2010/05/30(金・土・のみ)

アトリエとも[京都府]

昨年は近鉄百貨店阿倍野本店の仮囲い約240メートルの原画を手がけるなど、ドローイングを中心に、ユーモラスな作品世界で活躍の場をひろげている中村と、コラージュや絵画に映像を重ねる手法などを用いて、“物語の風景の模様”を描く森田。まったく異なる二人の個性がどのように混ざり合うのか、会場の空間は小さいが、そこに二人ならではのワンダーランドが出現するのは間違いない。

2010/03/23(金)(酒井千穂)

マイ・フェイバリット:とある美術の検索目録/所蔵品から

会期:2010/03/24~2010/05/05

京都国立近代美術館[京都府]

考えてみれば所蔵作品の分類と整理、系統化を重要な業務とする美術館において【その他】というカテゴリの作品資料があるのはやはり興味深い。絵画、彫刻、工芸、写真、デザインといった表現や、油彩、水彩、版画、陶芸など、技法の分類ににおさまりきらなかった【その他】の作品群を、それらと関係する資料もあわせて約300点展示した今展。分類上の名称でその位置を固定されなかったゆえの新しい物語や変化の可能性を孕んでいるという意義を示すとともに、美術作品のデータベース化が進み、分類の統合とさらなる細分化が迫られる美術館の制度と現状にも問いを投げかける、京都国立近代美術館で【その他】という項目が設けられてはじめて登録された作品は、マルセル・デュシャンの《ヴァリーズ(トランクの中の箱)》なのだそうだが、会場の展示もデュシャンから始まり、プレイベントとして講演会も開催されたK・ヴォディチコのほか、W・ティルマンス、やなぎみわ、倉俣史朗、横尾忠則、澤田知子などじつにさまざまな作品が並んでいた。関連資料を添えた展示構成は【その他】のコレクションの歴史や歩みを丁寧にたどるもので、じっくり見ると何時間もないと足りないほどのボリューム。そこに学芸員の同館への敬意と愛ががうかがえたのがなによりステキだ。

2010/03/24(木)(酒井千穂)

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MOTアニュアル2010「装飾」

会期:2010/02/06~2010/04/11

東京都現代美術館[東京都]

多様な「装飾」表現のあり方を通して、「装飾」の物質性のみならず、精神性の象徴や言語的、身体的な表現としての特性に注目する本展。出品作家の作品は、このテーマと直接には結びつかないもののほうが多いのだが、「装飾」という観点でそれぞれの表現にアプローチする試み自体が興味深い。床にインスタレーションされた山本基の塩の《迷宮》、薄い木材の作品全体が緻密に彫られた森淳一の彫刻、繁茂する植物のような小川敦生の石鹸の作品など、繊細でありながらダイナミックに連続や増殖のイメージを拡げる作品。時間、空間、記憶のイメージ、それらの境界に思いを巡らせる松本尚、水田寛、横内賢太郎の平面作品も美しかった。なかでも新鮮な感動を覚えたのは、塩保朋子の高さ6メートルを超える切り絵の作品。スケールの大きさの迫力はあれど白い紙をひたすら切り抜くという手法の冷静な印象のせいか、一見その空間は静謐に感じられる。しかし無数に切り抜かれた紙の隙間を透過する光が騒々しいほどの影の表情をつくり、空間を隔てるまさに紙一重のすれすれの際を浮かび上がらせて美しい。どの作品もじっくりと見るほどに境界が揺らぐ不思議に魅了される見応えの展覧会。

2010/03/27(土)(酒井千穂)

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アートフェア東京2010

会期:2010/04/02~2010/04/04

東京国際フォーラム[東京都]

今年も現代美術系の若手画商たちは展示ホール内ではなく、ロビーに仮設壁を立てて展示していた。そんな差別せずに、展示ホールの半分しか使ってないんだから入れてやれよと思うのだが、ひょっとしてバーゼルのような活気あふれるフリンジをねらっているのか(そのわりに規模がケタ違いに小さいが)、それとも彼ら自身がホール内に出展するのを望んでないのか(古美術と一緒じゃイヤだとか、外のほうが安いとか)。ま、どうでもいいけど、なんか今年は現代美術より古美術系が目についたなあ。

2010/04/01(木)(村田真)

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