2020年02月01日号
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artscapeレビュー

向井潤吉 展

2010年05月15日号

会期:2010/04/28~2010/05/10

横浜高島屋ギャラリー[神奈川県]

向井潤吉といえば、日本の茅葺き民家を描き続けた洋画家。なぜそんなもんを見に行ったかというと、ひとつはすぐれた戦争記録画を描いたから。もうひとつは、油絵でどこまで日本的農村風景に迫れるかということに関心があったから。戦争記録画はもっとも有名な、というよりこれ以外知らないのだが、中国・蘇州の街並に落とす軍用機の大きな影を描いた《影》のみの展示。広い意味では、掘削機を銃のように構えた《坑底の人々》や《献木伐採》も戦争記録画に入るかもしれない。そのほか民家以前では、パリ時代にルーヴル美術館に通って描いたデューラー、コロー、ルノワールらの模写と、同時期に制作したスーティンばりの表現主義的絵画との落差が興味深かった。民家は早くも敗戦の年から描かれ、以後93歳で亡くなるまで半世紀近く続く。同展では水彩画も含め約130点の出品作品のうち、およそ100点が民家の絵で占められていて、最後のほうはうんざりするほど。途中1959~60年に渡欧するが、そのときの風景画と比べてみると、日本の農村風景は圧倒的に土色とくすんだ緑色が多く、赤や深い青がきわめて少ないことがわかる。せっかく油絵具を用いながら原色をそのまま使用する機会が少ないのだ。これは向井に限ったことではなく、日本の油絵の特徴といえるかもしれない。

2010/04/30(金)(村田真)

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