artscapeレビュー

『都市計画』(都市計画学会誌)284号

2010年05月15日号

発行所:日本都市計画学会

発行日:2010年4月25日

特集は「1960年代の都市計画 再考」。都市計画学会誌の中でも、特に印象的な号である。執筆陣も、青山やすし、蓑原敬、平良敬一らをはじめ、錚々たるメンバーである。編集担当の武田重昭、佐藤宏亮らは、現在われわれが直面している都市状況の原点として1960年代をあげ、線引きや容積制度が定まり、オリンピックなどの大規模イベントに伴って都市基盤の整備もなされたこの時代の再考を促す。初田香成は、川上秀光の論考他を参考に都市再開発を再考し、木下光は、浅田孝の1950年代と1960年代の活動などから、浅田のもっていた都市像をまとめ、平良敬一は、編集者の視点から1960年代の都市計画について語るなど、いずれも「熱い」内容である。日本の都市計画を大きく再考する布石となるような特集だと感じた。
ところで、この読み応えのある号を読みつつさらに貪欲に思ったのは、半世紀前の1960年代からさらに半世紀遡った1910年代についても、いずれぜひ特集してほしいと感じたことである。旧都市計画法の制定された1919年とその周辺の出来事を同様にクローズアップできると、現在の日本の都市を定めている大きな土台と前提にいきつくのではないかと思った。

2010/04/30(金)(松田達)

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