2020年04月01日号
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artscapeレビュー

甲斐扶佐義「Kyoto behind Kyoto 夢のパサージュ」

2010年05月15日号

会期:2010/04/03~2010/04/14

コニカミノルタプラザ ギャラリーC[東京都]

甲斐扶佐義は1949年、大分生まれ。反戦運動に参加したあと京都・今出川に「ほんやら洞」という喫茶・スペースをオープンし、その経営のかたわらカメラを手に路上を散策してスナップを撮り続けてきた。もう一軒、木屋町に開業したバー「八文字屋」を訪れた女性たちを撮影してまとめた『八文字屋の美女たち』のシリーズをはじめとして、写真集も40冊以上刊行し、2009年には京都美術文化賞を受賞するなど、その存在は京都ではよく知られている。今回の展覧会はその受賞と仏文学者、杉本秀太郎との共著『夢の抜け口』(青草書房)の刊行にあわせてのもので、70年代以来の写真のプリントが壁いっぱいにピンナップしてあった。
甲斐の本領は、親しみやすいその人柄に呼び寄せられるようにカメラの前に立った人物や猫たちを、何の作為もなくすっと撮影することにある。40年以上も撮影していると、被写体との絶妙の距離感、シャッターを切るタイミングが自然体に身についていて、思わず顔がほころぶようなユーモラスな場面が多くなってくる。だが今回、そのようなわかりやすい日常スナップに加えて、どこか謎めいた、それこそ「夢の入口」を思わせるような感触の写真がけっこうあることに気づいた。写真展のDMや『夢の入口』の表紙に使われている、森のような場所を歩む老人と子どもたちのスナップもそんな一枚なのだが、ブレや揺らぎを含んだイメージに、彼のもうひとつの貌が浮かび上がってきているようでもある。シュルレアリスムへの接近とでもいいたくなるのだが、彼自身にはむろんそういう意図はないだろう。写真を撮り続けていると、むこうから勝手に「夢」が飛び込んできてしまうのかもしれない。

2010/04/07(水)(飯沢耕太郎)

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