artscapeレビュー

2014年06月15日号のレビュー/プレビュー

特別展「武家のみやこ 鎌倉の仏像 ─迫真とエキゾチシズム─」

会期:2014/04/05~2014/06/01

奈良国立博物館[奈良県]

鎌倉地方の仏像が関西でまとまって展示される初めての機会。鎌倉国宝館に寄託・所蔵される仏教彫刻、仏教絵画をはじめ、近隣の寺社の仏像が一堂に会し、奈良から鎌倉に根付いた仏像様式の多様な展開が紹介された。康慶にはじまる慶派の仏師たちも活躍した鎌倉は禅宗文化がいち早く浸透し、中国風の作品も次々と生みだされた土地。それゆえにこの地域にはヴァリエーションに富んだ仏像彫刻が残されているそうなのだが、今展出陳の仏像は実にどれもが個性的。会場で特に見蕩れてしまったのは、しなやかな体の曲線が蓮華を握る指先まで美しく表情に気品をたたえた浄光明寺の《観音菩薩坐像》。そして何と言っても頭の上に十二支獣を載せた《十二神将立像》だった。像高40センチ前後という小像なのだが、ポーズや十二支動物の特徴をよく表わした各像の顔の表情など、活き活きとした雰囲気がどれも見事。作者の造形力と想像力の豊かさが如実に表われていた。鎌倉の仏像の知識などほとんどない私だが、心奪われる感動を味わえた素晴らしい展覧会だった。

2014/05/28(水)(酒井千穂)

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谷澤紗和子展「よすがのもり」

会期:2014/04/07~2014/05/29

森林食堂[京都府]

巨大なインスタレーション作品を中心にこれまで多彩な表現手法による制作活動を行ってきた谷澤紗和子。2012年、大阪府立中之島図書館で開催された個展「ミンハメグリ」で谷澤がつくりあげた大型の切り絵によるインスタレーション空間は、壁面や床で心もとなく揺れる動物モチーフや模様の影の様子が美しく、印象に残っている。谷澤は東日本大震災直後に体験した感覚を機に「妄想/想像力の開放」を作品制作のテーマに取り入れるようになったという。今回個展を行っていたのは、カレーのケータリングチームとして関西の各アートイベントでも活躍している「森林食堂」の店舗。会場には、スペースを仕切るカーテンのように、和紙を素材にした大型の切り絵作品が展示され、小品も棚など店内の調度品に展示されていた。繁茂する植物や生き物のモチーフ、装飾的なパターンが連なる左右反転の切り絵作品は、表と裏、図と地、内側と外側のどれにもそれぞれ表情と趣きがあり、眺めていると物語の連想も掻き立てられていくから愉快。次回の発表も楽しみだ。



展示風景





展示風景 壁面



2014/05/29(木)(酒井千穂)

ゴー・ビトゥイーンズ展 こどもを通して見る世界

会期:2014/05/31~2014/08/31

森美術館[東京都]

1階下(森アーツセンターギャラリー)の「こども展」に合わせた企画なのか、「こども展」がモネやルノワールやピカソらモダンアートの巨匠による子どもを描いた絵なのに対し、こちらは子どもをモチーフにした現代美術の展示。奈良美智の絵画を例外として写真や映像が大半を占めるのは、メディアが多様化してるからというより、一筋縄ではいかない子どもの多面性を表現するためであり、子どもを捉えるアーティストの視点そのものが多様化したからでもあるだろう。たとえば、養子縁組した白人男性とアジア人の娘のツーショットを撮ったジャン・オーの「パパとわたし」シリーズを見て、禁断のエロティシズムを感じるのはぼくだけではないはずだ。ひととおり見終わった後に残るのは、カワイイとか無邪気といった陳腐な子どものイメージからはほど遠い、孤独でエロティックで生死の境をさまよう壮絶なイメージなのだ。たしかに子どものときってそうだったよな。

2014/05/30(金)(村田真)

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山元勝仁「eruptions」

会期:2014/05/30~2014/06/15

ROPPONGI HILLS A/D GALLERY[東京都]

アンフォルメル風に絵具をのせた正方形のタブロー上に、紙でつくったキノコや草花や記号類が生えている。タブローを横にすると「生えてる」のだが、壁に掛けているのでタブローから飛び出してるというべきか。そのキノコや記号はにぎやかなパターンで彩られ、草間彌生や村上隆の図柄を思い出してしまう。そもそもつくりがチープだし。

2014/05/30(金)(村田真)

AGC studio Exhibition No.10 多様な光のあるガラス建築展

会期:2014/03/07~2014/05/31

AGC studio 1階エントランスギャラリー[東京都]

京橋のAGC studioにて、U-30の若手による「多様な光のあるガラス建築展」を見る。昨年の大阪の「U-30展」に参加した建築家によるコンペ形式で、岩瀬諒子の《KUSANAMI》が最優秀だった。湾曲した板ガラスの群れがつくりだす風景を提案している。極薄ゆえに、風に抵抗するガラスではなく、風にそよぐイメージである。今回はこれを屋内で一部実現しているが、屋外で広大なランドスケープとして立ち上がる状態を体験してみたい。
写真:岩瀬諒子《KUSANAMI》

2014/05/30(金)(五十嵐太郎)

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