2022年12月01日号
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artscapeレビュー

2015年04月15日号のレビュー/プレビュー

畠山直哉「陸前高田 二〇一一─二〇一四」

会期:2015/03/25~2015/04/07

銀座ニコンサロン[東京都]

畠山直哉は、東日本大震災の津波で、故郷の岩手県陸前高田市の沿岸部が壊滅的な被害を被った後すぐに、その状況を撮影しはじめた。それらは2011年10月~12月に東京都写真美術館で開催された「ナチュラル・ストーリーズ」展で発表され、写真集『気仙川』(河出書房新社、2012年)にも収録される。被災地の生々しい情景を、緊密な画面構成で描写したそれらの写真群は、誰もがそれぞれの「3・11」の体験を想い起こしてしまうような、強い喚起力を備えていた。
だが、畠山はその後何度も陸前高田に足を運んで、このシリーズを撮り続けた。今回の銀座ニコンサロンでの個展では、2011年3月19日から2014年12月7日までの写真63点が、撮影された順に日付を付して展示されている。それらを見ると、瓦礫の山が片づけられ、更地に盛り土がされ、道路や防波堤が整備されるなど、時の経過とともに「復興」が進みつつあることがわかる。夏の祭りが復活し、仮設の弁当屋が店を開き、かなり早い時期にコンビニの営業が再開している。畠山の撮影の姿勢は、基本的に震災直後と変わりはないのだが、少しずつ平常化していく街の眺めに向けられた眼差しの質に、柔らかな余裕が感じられるようになっていた。
畠山は2002年頃から、実家があった気仙川の周辺の光景の写真を撮りためていた。その「気仙川」のシリーズは、やや緊急避難的な意味合いを込めつつ、「陸前高田」とともに「ナチュラル・ストーリーズ」展で発表され、写真集『気仙川』にも収録された。今回の展示を見て強く感じたのは、2013~14年頃の「陸前高田」の写真群は、「気仙川」に直接結びつき、その延長上に撮影されているように見えるということだった。おそらく、もう少し長くこのシリーズが撮り続けられていけば、これまでも戦災や津波の被害を乗りこえてきたこの街の歴史と、畠山の個人的な記憶・体験とが、分ちがたく溶け合っていくような「サーガ」として成長していくのではないだろうか。そんな予感を抱いてしまった。
なお、本展は2015年4月30日~5月13日に大阪ニコンサロンに巡回する。それにあわせて、河出書房新社から同名の写真集も刊行される予定である。

2015/03/25(水)(飯沢耕太郎)

さいたまトリエンナーレ2016 開催計画発表会

会期:2015/03/25

国際交流基金JFICホール[東京都]

来年秋(2016/9/24-12/11)さいたま市内数カ所で「さいたまトリエンナーレ2016」が開かれる。ディレクターは別府の「混浴温泉世界」などを手がけた芹沢高志、テーマは「未来の発見!」というもの。なにをいまさらトリエンナーレだが、目指すところは「ソフト・アーバニズム(柔らかな都市計画)」。国際展という打ち上げ花火を上げて観客を呼び込むのではなく、街の営みに創造性を吹き込み、人々に開かれた祭典にするためにさまざまなアートプロジェクトを展開していこうというのだ。そのため内外からアーティストを招いて滞在制作してもらい、ここでしか実現できない作品をつくってもらうという。それは理想的だが、いうはやすし。さいたま市の予算が使われる以上(ほかの国際展と遜色ない額とのこと)それなりの観客動員が求められるはずだが、京都の「パラソフィア」がそうだったように、見て楽しめるアートプロジェクトなどほとんどないし、アートプロジェクトで人を集められるとは思えない。それを見越してか、総合アドバイザーの加藤種男氏は「動員目標は掲げず、むしろつくる側を増やしたい。10万人くらい」と発言。つくる側とはもちろんアーティストだけでなく協働する市民も含めてだが、ぜひ実現してもらいたい。

2015/03/25(水)(村田真)

だれも知らない建築のはなし: Inside Architecture -A Challenge to Japanese Society-

ヴェネツィアビエンナーレ国際建築展2014を契機に制作された石山友美監督のドキュメント『だれも知らない建築のはなし』の試写会へ。その内容は、大阪万博後の1970年代、ポストモダンの興隆、熊本アートポリスのプロジェクト、バブル後と現在の構成となっている。日本の現代建築史を磯崎新、伊東豊雄、安藤忠雄、レム・コールハース、ピーター・アイゼンマン、チャールズ・ジェンクス、二川由夫らが語る。ポイントのひとつが、建築家と社会の関わりという意味では、金沢21世紀美術館の「3.11以後の建築」展へのイントロとしても鑑賞可能だろう。個人的には海外からの日本へのまなざしや異文化のディスコミュニケーション、そして1980年代バブルの日本がもっていた熱いエネルギーが面白かった。また磯崎が早い時期に、伊東、安藤の二名を高く評価していた目利きぶりにも改めて感心させられるし、ある程度、建築をすでに知っている人はかなり楽しめる。ドキュメント映画として、ハードルを下げる妥協をせず、初心者はわからない固有名詞が多いかもしれないが、多くの人がこれを見て、是非80年代に興味をもってほしい。

2015/03/26(木)(五十嵐太郎)

《JR神田万世橋ビル》《マーチエキュート 神田万世橋》

[東京都]

JR神田万世橋ビルとその手前の mAAch マーチエキュートを散策する。後者はみかんぐみが手がけたもの。万世橋の古い高架下を活用し、飲食店などが入る。ヨーロッパにあるようなリノベーションが、日本でもようやく普通になった。上部には2つの線路に挟まれた細長く、透明なカフェがあり、両側を電車が通る不思議な体験を味わえる。

写真:《マーチエキュート 神田万世橋》

2015/03/26(木)(五十嵐太郎)

3331アートフェア2015

会期:2015/03/21~2015/03/29

3331アーツ千代田メインギャラリー[東京都]

アートフェアといえば、画廊が集まってそれぞれ扱い作家の作品を出展する形式だが、これは主催者側がアーティストを選んで出品してもらい、作品を売ることで作家を支援すると同時に「新しいコレクター像」も確立しようというシステム。出品は五木田智央、三沢厚彦、オル太ら名を知られてるアーティストも含めて86組で、アートフェアというよりグループ展、いや個展の集合に近いかもしれない。ちょっとほしいなと思ったのは、「道頓堀」「パチンコ」などネオンサインの部分だけをプリントした藤倉翼、透明アクリルでヤドカリのシェルターをつくるAKI INOMATA、日本の近代絵画に擬態した菊谷達史、人体の一部を彫刻にする今野健太、セルフヌード写真に洞窟壁画のイメージを刺繍した宮川ひかる、CDケースや段ボール箱をタブロー化した末永史尚らの作品。ほしくはないけど、壁に穴をあける小川真生樹の作品(@5万円)は売れたんだろうか、心配になる。余談だが、このアートフェアが毎年ずっと続いたら、そして3331がなくならなければ、1316年後には「3331アートフェア3331」になるだろう。そこまで続けてほしいなあ。

2015/03/26(木)(村田真)

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