artscapeレビュー
2015年04月15日号のレビュー/プレビュー
高松次郎 制作の軌跡
会期:2015/04/07~2015/07/05
国立国際美術館[大阪府]
近年、回顧展や書籍を通じて、歴史化への関心が高まっている高松次郎の大規模な回顧展。本展の特徴は、絵画や版画、立体作品に加えて、約280点のドローイングや書籍・雑誌の装丁の仕事など、膨大な紙の仕事を高松の基底面と捉えて展示していることにある。とりわけポイントは、装丁の仕事を除き、「○○のための習作・下絵」といった表記をキャプションに記していないことにある。完成作の下部構造として位置付けるのではなく、その時期ごとの関心に応じて、「影」「遠近法」「単体」「複合体」「平面上の空間」というシリーズ名が冠せられている。また、各シリーズごとに分けられた展示スペースには、絵画や版画、立体作品と紙媒体のドローイングが並置され、同じ空間内に同居する。つまり、署名された完成作品/補完的存在としての習作というヒエラルキーを設けず、一つの関心軸およびシリーズを構成する連続体として眺めるように要請しているのである。
その意味で本展は、約40年の制作活動で膨大に残された紙の仕事の調査を通して、高松の思考の足跡を立体的に再構成しようとする、思考についての思考であり、メタ的装置としての性格を強く持つと言えるだろう。
2015/04/06(月)(高嶋慈)
カタログ&ブックス│2015年04月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
アートプロジェクトのつくりかた 「つながり」を「つづける」ためのことば
本書は、年々全国各地で増えつつある「アートプロジェクト」の実態、運営サイドの様子がわかる「実践的」な一冊となっています。一見小難しそうに見える「アートプロジェクト」をどうすればはじめられるか、何か「プロジェクト」をはじめたいNPO や公共団体・民間企業でも参考になるような、モノ・ヒト・コトの動かし方を具体的に示しています。[出版社サイトより]
Magazine for Document & Critic AC2[エー・シー・ドゥー] 16号(通巻17号)
国際芸術センター青森が、2001年の開館以来、およそ毎年1冊刊行している報告書を兼ねた「ドキュメント&クリティック・マガジン エー・シー・ドゥー」の第16号(通巻17号)。2014年度の事業報告とレビューのほか、関連する対談や論考などを掲載。今号の特集は東南アジアのアートシーン、國府理展「相対温室」ほか。
せんだいスクール・オブ・デザイン 2010-2014年度報告書
せんだいスクール・オブ・デザイン(SSD)の2010〜2014年にわたる最初の5年間の活動報告書。
青森EARTH 2014
青森の大地に根ざしたアートの可能性を探求して行くプロジェクト、「青森EARTH」のカタログ。2014年度は、青森ゆかりの画家・豊島弘尚(1933-2013)を追悼する「第1部=追悼・豊島弘尚 彼方からの凝視」、青森の縄文を代表する遺稿の一つ「環状列石(ストーンサークル)」を切り口に縄文と現代の接点のありかを問う「第2部=縄目の詩(うた)、石ノ柵」の二部構成にて開催された。
「思索雑感/Image Trash」2004 - 2015:校正用ノート
本書は「東京アートポイント計画」のリサーチプログラム「Tokyo Art Research Lab」の一環として実施している「アートプロジェクトの『言葉』を編む」の一環として制作されました。[本書より]ブログ「Report藤浩志企画制作室」のカテゴリ「思索雑感/Image Trash」をもとに作成されている。
金沢の町家──活きている家作職人の技
建築における伝統技術がいかに保存され継承されているか。その実例を加賀百万石の城下町、金沢の町家から探る。町家とは一般的に商人の専用住宅または職住併用の住宅のことをいい、伝統の技を生かした木造建築物である。幸いにも金沢は戦災や震災に遭うことがなかったために、今も古い町家が数多く残り、それらは金沢の歴史的資産として修復・再利用されている。[出版社サイトより]
長谷川豪 カンバセーションズ ヨーロッパ建築家と考える現在と歴史
現代建築は先の見えにくい状況が続いている。皆で共有できる明確な課題がない時代であるといわれる。そうした状況下においてヨーロッパの建築家が、なにを根拠に建築をつくろうとしているのか。長谷川豪がスイスの建築大学で設計スタジオを持っていた間、いま現代建築をつくることと、歴史に向かうこととの関係をいかに捉えているのか、をヨーロッパの建築家に問うた。2013年7月から2014年5月にかけて計6本の対話が収録され、この本にまとめられた。
あなたと どこでも アート/小さな家プロジェクト記録集
埼玉の公立ミュージアム5館が連携し、美術館内でのプログラムにとどまらず、公園や商店街、文化財建築から廃工場、まちなかのアートスポットまで、さまざまな場所でアートの新たな楽しみ方を提案してきたプロジェクト、「あなたと どこでも アート/小さな家プロジェクト」の記録集。
2015/04/10(金)(artscape編集部)