2020年04月01日号
次回4月15日更新予定

artscapeレビュー

2015年04月15日号のレビュー/プレビュー

JIA東北住宅大賞2014 第2次審査《雪谷の家》

会期:2015/03/09~2015/03/11

[青森県]

今度はむつー弘前の移動で、三時間。最近、常連となった蟻塚学による《雪谷の家》を見学する。以前に大賞をとった住宅が五軒隣で、大賞がきっかけで依頼されたという。太陽光パネルの使用、雪を外に落とさない、自動車三台、角地の与条件に対し、門型の駐車棟と細長い住宅を平行に配置し、あいだに雪を落とす巧みな解答である。
三日間の朝から夜の飲みまで完全拘束は大変だが、現場を訪れないとわからないことが多いのが、建築の面白いところだ。JIA東北住宅大賞は、一次審査で落ちた人にも必ず発表と質疑の場がもうけられており、なるべく多くの人が参加してよかったと思えるようにと考えられたシステム(審査員が恨まれない、ということでもある)。一緒に審査している古谷誠章がつくったものだが、このモデルは、愛知や四国の地域などでも、採用されるようになった。

2015/03/10(火)(五十嵐太郎)

JIA東北住宅大賞2014 第2次審査《牡鹿半島のための地域再生最小限住宅 板倉の家/コアハウス》

会期:2015/03/09~2015/03/11

[宮城県]

三日目は、青森ー仙台ー牡鹿半島と移動し、玉井洋一、アトリエ・ワン、アーキエイドらの《板倉の家》へ。以前、外観だけは見たが、今回は塚本由晴の案内で内部も入る。漁業の生活を調査し、それをコンパクトな空間にまとめつつ、板倉の構法を組み合わせる。内部はモダンながら、懐かしい空間だ。

2015/03/11(水)(五十嵐太郎)

JIA東北住宅大賞2014 第2次審査《名取の家》

会期:2015/03/09~2015/03/11

[宮城県]

名取に移動し、佐々木文彦による《名取の家》へ。3.11で被害を受けたRC造の住宅の建替えだが、鶴岡の土蔵と、やはり3.11の被害で公費解体が決まっていた宮城の古民家を救出し、ダブルで移築再生するアクロバティックなプロジェクトだ。大胆な屋根裏の構造を見せつつ、施主の集めた建具も散りばめる。結果的に、これが大賞に選ばれた。

2015/03/11(水)(五十嵐太郎)

JIA東北住宅大賞2014 第2次審査《水平線に沈む屋根》

会期:2015/03/09~2015/03/11

[宮城県]

最後の9番目は、手島浩之+千葉託巳による《水平線に沈む屋根》へ。仙台市の住宅地で、保安林に面した傾斜地という条件を生かす。一度、スロープで降りて、斜めの角度で玄関に入り、そこから上にのぼって眺めを楽しむガラス張りのリビング・ダイニングへ。断面・平面ともにひねった手島さんらしいデザインである。

2015/03/11(水)(五十嵐太郎)

百々武「草葉の陰で眠る獣」

会期:2015/03/11~2015/03/24

銀座ニコンサロン[東京都]

百々武は1977年大阪生まれ。1999年にビジュアルアーツ専門学校・大阪を卒業後、しばらく東京で暮らしていたが、奈良の実家に帰ってから、2009年から奈良県南部の山村を撮影しはじめた。百々の前作『島の力』(ブレーンセンター、2009年)は、日本全国、北から南までの島に足を運んで撮影したモノクロームの連作だったが、今回の「草葉の陰で眠る獣」は、カラーで撮影している。そのためもあるのだろうか。開放的な気分がシリーズ全体にあらわれていて、どこか明るい雰囲気に包み込まれていた。
冒頭の5点の写真は、菜の花畑にやってきた蜜蜂を撮影しているのだが、その導入部がとてもよかった。蜜蜂に導かれるように村の空間に入り込み、そこに住む人たちと出会い、さまざまな行事に参加し、猪狩りなども経験する。彼のカメラの前に姿をあらわすさまざまな風物を、昆虫や小動物などを含めて、気負うことなく、すっと画面におさめていく、その手つきの柔らかさ、しなやかさに、彼のカメラワークの特質があらわれているように感じた。結果的に、古い歴史を背負った奈良の風土が四季を通じて細やかに浮かび上がってくる、いいドキュメンタリーになったと思う。父親の写真家、百々俊二の重厚な力業とも、兄の木村伊兵衛写真賞受賞作家、百々新の軽やかなフットワークともひと味違った、百々武の写真のあり方が、はっきりと見えてきつつあるのではないだろうか。
展覧会にあわせて、赤々舎から同名のハードカバー写真集が刊行された。なお、本展は4月2日~8日に大阪ニコンサロンに巡回する。

2015/03/11(水)(飯沢耕太郎)

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