2021年01月15日号
次回2月1日更新予定

artscapeレビュー

2010年03月15日号のレビュー/プレビュー

東京五美術大学連合卒業・修了制作展

会期:2010/02/18~2010/02/28

国立新美術館[東京都]

自宅療養のため2月下旬はほとんど外出できなかった。五美大展もあやうく見逃すところだったが、最終日に杖をついて美術館へ。学生から見りゃ場違いなジジイだな。大ざっぱにいって学校ごとの違いはあるが、共通するのはどこかで見たことあるような絵が多いこと。最大公約数的に描写すると、具象的イメージをベースに、筆触やかすれなどペインタリーなタッチを強調し、夢のような世界を描いた装飾的画面、といったところだ。だいたいこのあたりがいまの流行りなんだろう。そんなのも含めて印象に残った作品を名前だけ列挙すると、武蔵美では高石晃、森田夕貴、片山久瑠実、土井奈々恵、女子美では唐沢瑶子、造形では佐藤翠、岩室理沙、滝川織恵、多摩美では高木真希人、南理紗。全部で千人くらい出してるから、いい作品に出会える確率は1パーセントくらい。絵画以外で目についたのは武蔵美の彫刻。池永和代、石井太介、工藤伸ら、これまで卒展では見たことないような新鮮な作品だった。今年は武蔵美の圧勝だな。

2010/02/28(日)(村田真)

小泉明郎 展「A LOVE SUPREME 至上の愛」

会期:2010/02/12~2010/02/28

京都造形芸術大学 GALLERY RAKU[京都府]

《男たちのメロドラマ#3》という作品は、シリーズで展開している作品らしい。ドローイング作品や展示のための構想スケッチなどもあったが、主に会場は個展初日に行なわれたパフォーマンスの記録映像とその時の舞台装置のインスタレーションで構成されていた。三島由紀夫の『金閣寺』の主人公をモチーフにしていると紹介されていたが、彼がパフォーマンスでかぶっていたマスクは三島自身がモデルのようだった。儀式的に切腹が行なわれるパフォーマンスなのだが、それが自慰行為のイメージでとにかく強烈。その最中ずっと聞こえるノイズ音も耳に焼き付くよう。別室では過去に発表された映像3作品も上映されていた。いずれも、消費社会の構造やそのなかでの権力構造、そこで翻弄される人々(われわれの)心理に鋭く切り込むような作品。この作家の作品は、見ると不愉快に感じる人もきっといるだろうな。だけど、個人的にはその鋭い考察と批判性を、軽々と切なさを孕んだコメディに換えてみせるセンスや強い態度がとても魅力的に映った。なにしろ今年見た展覧会のなかでも、もっとも過激で印象に残る個展だった。

2010/02/28(日)(酒井千穂)

京都オープンスタジオ2010:田中英行展「空宙の∞~忘却の果ての歴史α~」

会期:2010/02/11~2010/02/28

AAS[京都府]

こちらも最終日の駆け込みになってしまった。京都オープンスタジオ2010の参加スタジオのひとつAAS。Antennaというグループがたちあげたアートスペースなのだが、制作だけでなく企画展を開催するスペースとしても使用している場所なのだとこの時初めて知った。今回はAntennaのメンバー、田中英行の個展を開催。1階には、森の大木の周りに集まる動物たちをイメージした、廃材を用いたインスタレーション。飛行機と思われる過去の立体作品を破壊するパフォーマンスの映像も合わせて上映されていた。定かではないが、作品の素材はこの旧作の破片で構成されているようだった。増殖するイメージ、そして破壊と再生のプロセスを見ていると切ない気分にもなっていくが、その果敢なさまにも打たれる気分。見に行ってよかった。

2010/02/28(日)(酒井千穂)

トウキョウ建築コレクション2010

会期:2010/03/02~2010/03/07

代官山ヒルサイドテラスF棟/ヒルサイド・フォーラム[東京都]

卒業設計に対して修士設計がこれまでそれほどイベント的には取り扱われてこなかったのは、大学院の修士要件が、基本的に修士論文であったからである。しかし、近年多くの大学で、修士設計で修了ができるようになってきており、それが本イベントのはじまった背景としてあるだろう。修士設計の日本一決定戦ともいえるトウキョウ建築コレクションは、2007年に始まり今年で四年目を迎える(初年度のプレイベントとして2006年11月に「トウキョウ建築コネクション」が開かれた)。これまでの修士設計展、修士論文展、講演会に加え、研究室単位のプロジェクトを発表する修士プロジェクト展も加わった。筆者は、今年はじめて会場を訪れた。自分が修士の学生であった時は、このようなイベントはなかったので、まず多くの発表の機会があることに羨ましさを感じた。また卒業設計とはさすがに二年の差を感じさせる、一発勝負ではない完成度をどの作品も持っていた。特に感じたのは、リサーチ的な設計が増えてきていたことである。形にたどり着くまでの思考をリサーチとしてまとめてある作品などが散見されたが、こういった傾向はこれまでにはあまり多くなかったかと思う。いわばリサーチとデザインの統合的な設計が増えてきているという徴候を感じた。なお、論文をA1一枚でプレゼンテーションしてあることや、大学の研究室の特色が見えてくる修士プロジェクト展もとても興味深かった。設計に加えて、論文、プロジェクトなど、多様な発表の機会が同時にあるところが、大学院の活動の広がりを感じさせた。

http://www.tkc-net.org/

2010/03/02(火)(松田達)

カタログ&ブックス│2010年03月

展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。

対照guide

著者:佐内正史
発行日:2009年
発行:川崎市岡本太郎美術館
サイズ:A5変形判

2009年10月10日(土)から2010年1月11日(月)まで川崎市岡本太郎美術館で行なわれた「対照 佐内正史の写真」のカタログ。テキストと川崎市岡本太郎美術館の周辺写真が繰り返されているもので、美術館での展示とは違う構成になっている。


日常/場違い

発行日:2009年
発行:神奈川県民ホールギャラリー
価格:2,000円
サイズ:B5判

2009年12月16日(水)から2010年1月23日(土)まで神奈川県民ホールギャラリーで行なわれた「日常/場違い」のカタログ。載っている作品も変わっているが、カタログ自体も変わっている。4つの大きさに分けられた冊子をそれぞれ中に挟み込んで留められていたり、保存用ケースも3色の中から選べたりと、カタログだけでも楽しめる。


「'おいしく、食べる'の科学展」フォトカードセット

著者:日本未来科学館 assistant
発行日:2010年1月1日
発行:森アーツセンターミュージアムショップ
価格:1,050円(税込)
サイズ:ポストカード判

写真家、新津保建秀によって撮影された「'おいしく、食べる'の科学展」の会場の写真を空間・展示デザインを手がけた建築ユニット「assistant」が編集を行なったフォトカードセット。ポストカードになっているものと、裏に展示のコンテンツが掲載されているものがある。


コンセプション

著者:岡田利規
発行日:2010年2月28日
発行:BCCKS ブックス文庫
価格:1,229円(税込)
サイズ:文庫判

演劇ユニット「チェルフィッチュ」を主宰する岡田利規の対話集。『わたしたちは無傷な別人であるのか?』の公開リハーサルにあわせて行われた、レクチャーと対談4本を収録。話者は、佐々木敦、桜井圭介、池田扶美代、ティム・エッチェル。


植物の化石 5億年の記憶

発行日:2010年3月15日
発行:INAX出版
価格:1,500円(税込)
サイズ:A4変形

INAXギャラリーで2010年3月5日(金)から2010年5月20日(木)まで行なわれる「植物化石展/5億年の記憶」と併せて刊行されたカタログ。化石の写真、イラスト、テキストによって、さまざまな種類の植物の化石が解説されている。

2010/03/15(月)(artscape編集部)

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