2019年07月15日号
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artscapeレビュー

2010年08月15日号のレビュー/プレビュー

視力0.01

会期:2010/07/22~2010/08/03

大東市立生涯学習センターアクロス[大阪府]

中村協子、光島貴之、尾柳佳枝、中谷由紀、Haruhiという5名のアーティストのグループ展。目の見える人、見えない人、見えにくい人など、さまざまな人がそれぞれに作品の色彩や触感を楽しめるというテーマをもっていた。会場はもともと展示を目的とした空間ではないので、作品が無造作に置かれているような印象も否めず、展覧会としての雰囲気はないのだが、布などの手芸素材をつかった各作家の作品は触れること自体の喜びと意識を喚起してなかなか心地よく、思っていた以上に長居した。せっかくなので今後も連続して開催されたら良いのになあ。

2010/07/29(木)(酒井千穂)

~展

会期:2010/07/30~2010/08/05

BankARTスタジオNYK[神奈川県]

多摩美芸術学科が企画し、絵画学科や情報デザイン学科の学生が出品する展覧会。担当教官の海老塚耕一と上田雄三は男だが、キュレーター(3人)もアーティスト(25人)も大半が女の子。さらに韓国からの留学生が5人も入ってる。タイトルの~は「なみ」と読み、現代人のコミュニケーションの揺らぎや人々の心の波を表わすらしい。ま、個々の作品もキュレーションの切れ味も「並」だな。

2010/07/31(土)(村田真)

三宅理一『秋葉原は今』

発行所:芸術新聞社

発行日:2010年6月21日

日本でもっとも有名な電気街であり、ゼロ年代にはオタクの聖地として注目された、秋葉原に関する最新の都市論だ。森川嘉一郎のアキバ論『趣都の誕生』(幻冬舎、2003)に比べて、安心して読める。むろん、三宅理一は、2004年から「D-秋葉原」構想の当事者として、再開発の一部に関わった経緯もあるが、歴史家として、もっと長い歴史的なパースペクティブから、この街の変容を描いているからだ。そしてグローバルな視点から、海外の事例と比較しながら、秋葉原の位置づけを行なっていることも説得力がある。萌えというオリエンタリズム的なキーワードで読み解くのではない。本書は、2006年にグランドオープンしたUDXビルを含む、一連の再開発が、いかなる経緯でスタートし、どのように展開したかの流れを、法制度や経済状況、また事業者の関係などから複合的に分析する。詳しく説明される日本における、都市計画の手続きは興味深い。残念なのは、ゼロ年代になって、地元の意向が反映されなくなったことだ。例えば、第二東京タワーの誘致問題や、ヨドバシカメラの駅前進出などである。その起死回生として持ち上がったD-秋葉原のプロジェクトも、中止に追い込まれたことだ。おそらくデザインミュージアムなどが実現すれば、画期的な施設になっただろう。経済の自由競争によって発展した秋葉原が、その同じ原理によって異なるものに変わってしまい、再開発が終わったときには、ほとんどの当事者がいなくなっていたというのは皮肉である。

2010/07/31(土)(五十嵐太郎)

田中純『イメージの自然史』

発行所:羽鳥書店

発行日:2010年6月21日

筆者と同じ頃、すなわち1990年代の半ばに『10+1』で論考を書きはじめた田中純の最新作である。その動向には注目していた。当時、ベンヤミン再評価の流れが起きていたが、田中はおそらくその最良の成果となる都市論を執筆している。建築学科に所属する筆者が、やがて展覧会や審査などの仕事を通じ、創作の現場から建築と関わらざるをえなくなったのに対し、人文学を出自とする田中は、多木浩二のたどってきた道とは違い、創作者らと一定の距離をたもち、それゆえに批判的を言説を繰りだす。そして本書は、むしろ古今東西のイメージをさまようヴァールブルクの「ムネモシュネ」プロジェクトを現代において蘇生させたかのような原型的イメージをめぐる考察を行なう。『イメージの自然史』は、主に東京大学出版会の『UP』の連載をベースとしており、筆者も掲載時から断片的に読んでいた。改めて通読すると、相変わらず、ものすごい読書量であり、めくるめくイメージの連鎖の世界に誘う。読書という豊かな経験を思い出させてくれる本だ。実際、そうした本へのフェティシュを感じる。田中は最後に、こう言う。ネットワークの時代において、本という「『暗いおもちゃ』は、一冊一冊が異なる表情で佇みながら、どこか不穏な気配を漂わせている。液晶ディスプレイにはない暗さ、その翳りに、小さな生き物を思わせる生命が微かに宿る。……本書は、夕陽のように翳りを帯びた書物のアウラ、その儚い生命のイメージに捧げられてる」。なるほど、あえて主流にはのらない、懐かしさも感じられるかもしれない。過去や記憶なきネットとアーキテクチャ論、社会学的な言説、工学主義への注目、そうしたゼロ年代のメインストリームに対して、直接名指しすることはほとんどないが、密やかに、そして強靭に抵抗している。

2010/07/31(土)(五十嵐太郎)

『ワンダーJAPAN』16号

発行所:三才ブックス

発行日:2010年6月16日

いつもへんてこで、美しくない日本の風景をビジュアルで見せてくれる雑誌。新宗教の建築などもとりあげてきたが、今回は「たのしい公園遊具」の特集。富士山型が多いのは知っていたが、本書を開くと、カブトムシや白鳥、テントウムシやうさぎなどの動物系、土星や人工衛星などの宇宙系、新幹線や船などの乗り物系、ゴジラや恐竜などの怪獣系など、予想を超える物件が目白押し。しかも、デザインはエッジがきいておらず、ゆるキャラ的な弛緩した雰囲気が漂う。なるほど、遊具なわけで、子ども向けなのだが、近所の公園がすでにテーマパークと化していたことに改めて驚かされる。

2010/07/31(土)(五十嵐太郎)

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