2019年07月15日号
次回8月1日更新予定

artscapeレビュー

2010年08月15日号のレビュー/プレビュー

泉イネ展「未完本姉妹 影の冬光」

会期:2010/07/07~2010/08/07

MA2 Gallery[東京都]

小山登美夫ギャラリーと同時開催のシリーズ展。本姉妹をめぐるさまざまな断片が絵に描かれている。絵は細密画のようにていねいに描いた紺泉風と、余白を残して大ざっぱに描いた泉イネ風があって、どちらも捨てがたい。よく見ると、紺風はキャンヴァスを木枠の裏側で止めてるのに、イネ風は木枠の側面で金の釘を使って几帳面に止めてるのがわかる。こうしたスタイルの選択といい、本姉妹という物語設定といい、どうも男には理解しきれないところがあって、そこが魅力なんだろうなあきっと。

2010/07/07(水)(村田真)

青木孝子展

会期:2010/07/01~2010/07/30

日仏会館エントランスホール[東京都]

荒目の麻布に波涛か岩肌を思わせるマチエールをつくり、そこに色彩を施した絵画。情感あふれる抽象という意味では20世紀、いや昭和の残り香がする。ところで、今日見た個展は3本とも女性作家で、世代も30~50代とバラけているが、その最年長が今年56歳になる青木さん。なぜ知ってるのかといえば、彼女はぼくと美大の同級生だったからだ。ごめんね年をバラして。で、なにをいいたいのかというと、年齢が上がるほど作品の性差が感じられなくなるということだ。誤解を恐れずにいってしまえば、3人のうち最年少の泉イネは女性でしか考えないようなことを思いつき、いかにも女性らしい絵を描くが、青木の絵は作者が男だといわれても納得してしまうだろう。青木が男っぽいということではなく、彼女が絵を学んだのは男が圧倒的多数を占める時代であり、だから男の感性を基準にするしかなかったのだ。ところがいまは時代が変わり、美大では女性が圧倒的多数に逆転したので、男性画家の絵が女性らしくなったといえるかもしれない。

2010/07/07(水)(村田真)

増田敏也展 -image-

会期:2010/07/06~2010/07/11

ギャラリーはねうさぎroom4[京都府]

雨傘やポリバケツ、水道の蛇口、有名ブランドを想起させるバッグ(中にはパンとネギが入っている)など、日常的な道具や雑貨、シチュエーションをモチーフにした陶芸作品は、表面が凸凹でモザイクのように彩色されている。低解像度のデジタル表現をイメージしてデフォルメしているのだが、昔のテレビゲームの画面からポイと三次元空間に飛び出したもののようで愉快だ。一見バカバカしくもあり、そのユーモアの壮快なインパクトが大きいが、仮想世界やイメージのフェイクという遊びにリアルな感覚と知性がうかがえた。

2010/07/09(金)(酒井千穂)

児玉靖枝 展「深韻2010」

会期:2010/07/06~2010/07/18

アートスペース虹[京都府]

梅雨明けも間近だったが訪問したときはどしゃ降りの雨がやんだばかりのどんよりとした空。画面の灰色がかった光と、透明な風の流れを思わせる色彩の重なりによる微妙な表情が、実際の外の風景と重なるようでもあった。まばゆい光の抜けるような鮮やかさではなく、しっとりとした湿度を孕んだ鈍い空気のなかの仄かなピンクや紫色の光、そのなかにスッと立つ木々のイメージは、目では確認できないその奥の、遠くの存在や風景の想像も喚起していく。描かれた情景と色彩の重なりから辿っていく時間の美しさにすっかり興奮してしまった。できることならもう一度見に行きたかった。

2010/07/10(土)(酒井千穂)

中谷由紀 個展「庭をのぞく」

会期:2010/07/16~2010/08/01

カフェ&ギャラリーアトリエとも[京都府]

中谷のファンだという作家、中村協子によって企画された展覧会。DM掲載の作品《ケイトウさん》と今展のタイトル「庭をのぞく」のインパクトがまずすごい。8年ぶりの個展だそうで、私は今展で初めて作品を目にしたのだが、毒っ気とユルい雰囲気のバランス、描かれた動物のユーモラスな表情、豆やビワなどユニークなモチーフ、どれも実に楽しい。綿布にアクリルグァッシュで描いた作品は染色のあじわいがあり、柔らかな色彩の印象。ホワイトキューブではないこの会場の個性的な空間にもよく似合っていた。

2010/07/10(土)(酒井千穂)

2010年08月15日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ