2019年07月15日号
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artscapeレビュー

2010年08月15日号のレビュー/プレビュー

ボストン美術館展 西洋絵画の巨匠たち

会期:2010/07/06~2010/08/29

京都市美術館[京都府]

ボストン美術館の新館建設とヨーロッパ絵画部門の拡大、増築にともなって貸し出された16世紀~20世紀前半の絵画80点を展示。ベラスケス、ヴァン・ダイク、レンブラントから、コロー、ミレー、マネ、モネ、セザンヌ、ルノワール、ゴッホ、ピカソと美術の教科書に載る名が勢揃いした展覧会。マネの隣にベラスケスの作品があるなど、異なる時代のものが並列しているのは肖像画、宗教絵画、風景画など、会場が主題ごとのセクションに分かれているため。モネの風景画のみ11点が並ぶ空間「モネの冒険」は圧巻の見応えだ。《プールヴィル、ラ・カヴェの道》(1882)、《アンティーブの古城》(1888)など、海辺の光景を描いた絵画に見られる色彩の調和、色の重なりや筆の動きは特に生々しく、水と空の移りゆく表情の奥深さに魅了される。炎天下で行列に並ぶことを考えると気が遠くなりそうだが「名画フルコース」の満足感と充実感はたしかに他に代え難い。

2010/07/03(土)(酒井千穂)

湯沢英治「REAL BONES」

会期:2010/07/02~2010/09/08

ジィオデシック[東京都]

2008年に写真集『BONES 動物の骨格と機能美』(早川書房)を刊行した湯沢英治の個展。たしかに動物や魚類の骨をクローズアップで撮影すると、あたかも壮大な建築物を見ているような気持ちを起こさせる。そういえば、アーヴィング・ペンにも『頭骨建築(Cranium Architecture)』(1988)という写真集があった。だが、中目黒のジュエリー・ショップで開催された今回の個展を見ると、湯沢の関心がペンの作品のようなスケール感を求めるのではなく、むしろ骨の細部の繊細な構造に向かっているのがわかる。「動物が小さくなればなるほど、骨の構造が緻密になってくる」のだ。その意味では今回展示された旧作よりも、まだポートフォリオの形にしかなっていない新作の方が興味深かった。小さな鳥類や魚類の骨格が、本当に細やかに絡みあっている様子は、どこか希薄で透明感があり、まさに暗闇で光を放つ宝石のような美しさなのだ。また骨の背景の処理も以前は黒バックが中心で、どちらかといえば図鑑的だったのだが、一部に淡い光を取り込むことで、空間の奥行き感が強まっている。骨というテーマを的確に表現していくとともに、独自の作品世界を構築していこうという意欲を感じさせる。もともと湯沢が写真を撮影し始めた動機は、シュルレアリスム的な表現が可能ではないかと思ったことだったという。今後は骨を単独で撮影するだけでなく、ほかの骨やオブジェと組み合わせたり、その置き場所を工夫したりするなど、さらなる展開も充分に期待できるのではないだろうか。

2010/07/03(土)(飯沢耕太郎)

《深川ラボ&深川いっぷく》

[東京都]

東京都立現代美術館のすぐ近く、深川資料館通りに、通りを挟んで向かい合うように、深川ラボと深川いっぷくは位置している。深川ラボは、現代美術ギャラリー、アートショップ、ディレクター白濱雅也氏らの制作アトリエを兼ねたスペースであり、浅草橋にあるギャラリー、マキイマサルファインアーツのサテライト実験工房という位置づけでもある。一方、向かいの深川いっぷくはコミュニティカフェ兼ギャラリースペースであり、地域の人たちや美術関係者が気軽に集うサロン的スペースとなっている。実際行ってみると、ひっきりなしに人々が訪れ、お茶を飲み、語り、帰っていくという、とても居心地の良い場所であり、このようなスペースはほかにあまりないだろう。似た場所として、金沢のCAAKがあげられるかもしれない。現代美術館の近くに、オルタナティヴな方向性の場所をつくっているという点でも似ている。二つの施設は、下町と現代美術を結びつける導入口ともなっており、街に開かれた美術スペースとして機能しているといえるだろう。

深川ラボURL:http://mmfalabo.exblog.jp/
深川いっぷくURL:http://www.fukagawa-ippuku.jp/

2010/07/03(土)(松田達)

束芋 断面の世代

会期:2010/07/10~2010/09/12

国立国際美術館[大阪府]

昨年、横浜美術館で開催されたものの巡回展だが、そのときとは会場の構成が異なり、全体的に印象も違っていたのが面白い。暗い迷路状の会場を歩いていると、実に奇妙な束芋ワールドを彷徨っているよう。「個」の存在が外部世界との関わりのなかで変化していくありさまを映像として二次元から三次元に立体的に展開していくその表現に一層独特の雰囲気と説得力を与えていた。個の内面と外の世界、作品ごとに異なる「断面」の切り口が、暗闇の中で交錯していく感じが想像をさらに喚起する。吉田修一の新聞連載小説『悪人』の挿絵、手や指先、髪の毛など、身体の一部分が絡み合うドローイングがずらりとならぶ空間は不気味でありながら美しい。まさに壮観の眺めだった。

2010/07/05(月)(酒井千穂)

a consideration for mirrors 鏡について

会期:2010/06/24~2010/07/10

工房“親”[東京都]

世界中で撮り集めた鏡をのぞく人たちのポートレート。写真にはその人の鏡像も写っているので、ダブルポートレートといってもいい。だが、実物の鏡を使ったインスタレーションが展示されてることからもわかるように、彼女の鏡に対する偏愛が前面に出てしまい、それ以上に鏡と写真の織りなす迷宮世界や、場所や人との関係性には踏み込んでいるようには見えず、どこか消化不良の感は否めない。

2010/07/07(水)(村田真)

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