2020年07月01日号
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artscapeレビュー

フェルメールからのラブレター展

2012年02月15日号

会期:2011/12/23~2012/03/14

Bunkamuraザ・ミュージアム[東京都]

フェルメールが3点も来た。たった3点というなかれ、数の少ないフェルメールだからとても貴重だ。しかも今回は借りられるものを借りてきたというのではなく、手紙をモチーフにした絵に絞っている。とりわけうれしいのは《手紙を読む青衣の女》が見られること。地図をバックに女性が横向きに手紙を読み、かたわらに椅子やテーブルが置いてあるだけ、色彩もブルー系とオーカー系でまとめたきわめてシンプルな小品だが、おそらく画家の筆がもっとも冴えた最盛期の傑作のひとつといえる。注目すべきは、女性の頭部と背景の地図に同系色を用いながら、質感の違いや陰影・明暗を微妙に描き分けていること。これは、色彩も輪郭もくっきり描いた晩年の作とおぼしき《手紙を書く女と召使い》と比べると、違いは明らか。まさにフェルメールならではの絶妙な表現だ。フェルメール以外にもヤン・ステーンとかテル・ボルフとかヘリット・ダウとか、興味深い画家がたくさん出ているが、目に止まったのはファン・ボホーフェンという画家。珍しい大画面(といっても120号大)に11人の家族を描いたものだが、胴体と顔の向きが不自然なうえに、それぞれエリマキトカゲのように巨大な白襟をつけているので、なんだか生首の見本市みたい。でも美術史的な価値基準によらずにこれをながめてみると、スーパーリアリズムかコラージュ作品のようにも見えてくるのだ。惜しいことに、これを描いた4年後にわずか25歳の若さで亡くなったという。もう少し長生きしていたら名を残したかも。

2012/01/06(金)(村田真)

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