2020年07月01日号
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artscapeレビュー

佐藤信太郎「東京|天空樹 Risen in East」

2012年02月15日号

会期:2012/01/13~2012/02/25

フォト・ギャラリー・インターナショナル[東京都]

写真集と展示の違いが際立って見える作品があるが、佐藤信太郎の「東京|天空樹 Risen in East」はそのいい例だろう。青幻舎から刊行された写真集を見たときには、前作の『非常階段東京─TOKYO TWILIGHT ZONE』(青幻舎、2008年)の延長線上の仕事に思えた。ところが、フォト・ギャラリー・インターナショナルの展示を見て、遅まきながら、その方法論自体が大きく変化していることに気づかされた。
まず最大で3,139×311ミリという画面の大きさが圧倒的だ。横が極端に長いパノラマサイズのプリントは、当然ながらデジタルカメラの画像をつなぎあわせたものだ。最大30枚以上の画像が使われているという。ということは、佐藤は4×5判の大判カメラを使っていた前作から、撮影とプリントのシステム自体を完全に変えてしまったことになる。結果として、ある特定の時間(黄昏時)、特定の眺め(ビルの非常階段から)にこだわっていた前作と比較して、表現の幅がかなり広がりをもつものとなった。それだけでなく、複数の時間、複数の視点がひとつの画面に写り込むことによって、あたかも絵巻物を見るように、伸び縮みする視覚的体験が生じてきている。
その中心に写り込んでいるのが、言うまでもなく建造中の東京スカイツリーである。この「天空樹」の出現は、誰もが気づかざるをえないように、東京の東半分の地域の眺めを大きく変えつつある。特に浅草の街並みや墨田区京島の戦前から残っている古い長屋などとくっきりとしたコントラストを描き出すことで、新たな景観が生み出されようとしている。まさに都市の生成途上の姿を捉えたドキュメントとしても、意味のある仕事と言えそうだ。

2012/01/26(木)(飯沢耕太郎)

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