artscapeレビュー

試写『世界最古の洞窟壁画3D 忘れられた夢の記憶』

2012年02月15日号

会期:2012/01/27

ブロードメディアスタジオ[東京都]

1994年に南仏で発見されたショーヴェ洞窟の壁画は、約3万2千年前に描かれた世界最古の絵とされている。壁画保護のため入場を制限しているこの洞窟に、初めて3Dカメラによる撮影を許可されたのがヴェルナー・ヘルツォーク監督だ。この映画のおもしろさは、もちろん第一に洞窟壁画を3D映像で体感できること。洞窟壁画には凹凸がある、というより壁の凹凸に沿って描かれているのに、われわれが目にすることができるのは図版だけなので、それを実感できなかった。この映画では、とくに後半に思うぞんぶん絵の立体感(この矛盾に洞窟壁画の秘密がある)を体験することができるのだ。第二のおもしろさは、洞窟に入るのに撮影機材やスタッフの人数まで厳しく制限されたため、とくに前半では洞窟に入って撮影するというみずからの行為自体をドキュメンタリーの対象にせざるをえなかったこと。つまり、メタドキュメンタリーという自己言及的な事態を引き起こしているのだ。そして第三は、これを見る観客がいる暗い映画館内と、映像内の洞窟空間とがひと連なりにつながって感じられるということ。とくに試写室という狭い密室空間ではなおさら自分が洞窟内にいると感じられる。ともあれ、洞窟壁画ファン(少ないだろうけど)には垂涎の映画であることは間違いない。[TOHOシネマズ日劇、TOHOシネマズ六本木ヒルズほかで、3週間限定 春休み特別ロードショー(3/3~)]

2012/01/27(金)(村田真)

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