2020年07月01日号
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artscapeレビュー

細江英公 写真展 第一期 鎌鼬

2012年02月15日号

会期:2012/01/06~2012/01/29

BLD GALLERY[東京都]

これから5月にかけて開催される、BLD GALLERYでの細江英公の連続写真展の第一弾である。以後、「シモン 私風景」「おとこと女+抱擁+ルナ・ロッサ」「大野一雄+ロダン」「知人たちの肖像」「薔薇刑」と続く。
あらためて見ると、暗黒舞踏の創始者土方巽をモデルとするこの「鎌鼬」のシリーズが、細江にとって特別な作品であったことがわかる。細江自身が30歳代半ばで、肉体的にも精神的にも最もエスカレートしていた時期であり、1960年代の疾風怒濤的な文化状況がその高揚感に拍車をかけていた。1968年3月に、このシリーズが「とてつもなく悲劇的な喜劇」というタイトルで初めてニコンサロンで展示されたとき、細江はその挨拶文に「絶対演出による日本の舞踏家・天才〈土方巽〉出演の、もっとも充血したドキュメンタリー」と書き記している。「絶対演出による」というのは、言うまでもなく土門拳が「リアリズム写真」を定義した「絶対非演出の絶対スナップ」という言葉を踏まえたものだ。つまり、一世代上の土門拳の方法論を、演劇的な手法によって解体・顛倒してしまうことがもくろまれているわけだ。それは、土方のたぐいまれな肉体とパフォーマンスの助けを借りて見事に成就している。
今回の展示には、そのニコンサロンの写真展のときの作品パネルがそのまま飾られていた。2000年に松濤美術館で開催された「細江英公の写真 1950-2000」にも同じパネルが出品されていたのだが、そのときに比べると画面の端の部分に印画紙の銀が浮き出して、染みのように広がっている面積がより大きくなっている。つまり写真自体が生成変化しているわけで、むしろそのことによって、土方の故郷でもある秋田県雄勝郡羽後町で繰り広げられるパフォーマンスが、凄みと生々しさを増しているように感じられた。

2012/01/09(月)(飯沢耕太郎)

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