2019年07月15日号
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artscapeレビュー

札幌国際芸術祭2014

2014年08月15日号

会期:2014/07/19~2014/09/28

地下歩行空間(チ・カ・ホ)+芸術の森美術館+北海道立近代美術館[北海道]

早朝の便で札幌へ。まずは札幌駅から続く地下歩行空間の一画に設けられた受付でプレス登録。芸術祭は「都市と自然」をテーマに掲げ、市街地だけでなく郊外にも作品を点在させているため、ツアーに乗って見ることにする。最初はこの地下通路に展示された作品から。ここはかつて川が流れていた場所らしく、その記憶をたどりつつ地下の水脈に耳を傾けるという「センシング・ストリームズ」をテーマにしている。それこそセンシティブなテーマのうえ、映像やメディア系の作品が多いため、一見なにをやっているのか伝わりにくい。たとえば、自動的にグラフィティを描く装置で知られる菅野創/yang02は今回、通行人に反応してペンが動く仕掛けを開発したが、おもしろさが直接伝わりにくくなった。もっとビジュアル・インパクトが強くなくちゃ通行人は足を止めないよ。人通りの多い(ということは制約も多い)公共空間を使うのはチャレンジングな試みだけど、とても難しいことだ。地上に出ると、レンガ張りの歩道の中央に巨大な岩塊がドンと置いてある。島袋道浩の《一石を投じる》。アイヌの集落がある二風谷から運んできた直径2メートルを超す奇岩で、碁盤目状に整備された札幌のど真ん中に得体の知れない「自然」を置くことで、文字どおり「都市」に一石を投じている。これは痛快。地下空間でのストレスを発散させてくれた。
バスで郊外の札幌芸術の森美術館へ。ここと北海道立近代美術館の2館は作品が集中するメイン会場になっている。芸術の森に出してるのは砂澤ビッキ、宮永愛子、トマス・サラセーノ、カールステン・ニコライら約10人だけど、旧作や「都市と自然」のテーマに引きずられた作品が目立ち、ハジケたものがないなあ。第一せっかく自然に囲まれた場所なのに、なんで屋外に出ないのか。そんなこともあって、美術館から10分ほど歩いた森のなかで聞いたスーザン・フィリップスのサウンド・インスタレーション《カッコウの巣》は、とてもさわやかで印象的だった。こんもりとした森の樹上に数台のスピーカーを環状に仕掛け、中世から伝わるカッコウ(札幌市の鳥でもある)の歌を本人が唄い、輪唱にして聞かせるというもの。札幌国際芸術祭にもっともふさわしい作品といえるかもしれない。ただしこれも札幌オリジナルではなく、2011年の旧作だけどね。
都心に戻って北海道立近代美術館へ。芸術の森が「自然」に恵まれた環境とすれば、近代美術館は「都市」のど真ん中と対比を際立たせている。こちらは岡部昌生、高谷史郎、アンゼルム・キーファー、スポード・グプタらの出品。壷や皿など金属の器を集積してキノコ雲のかたちにしたグプタの巨大彫刻は、旧作ながら圧倒されるが、同じ旧作でも福岡市美術館から借りてきたキーファーの《メランコリア》は、ここにある理由がわからない。なんでいまさらキーファーなんだ? 完全に浮いている。全体に「都市と自然」のテーマ、そこから派生する北海道の炭鉱や近代化の問題、あるいはアイヌやエコロジーに対する問題意識は高いが、それを直裁に作品化したものが多く、島袋やグプタのように一歩引いて諧謔的だったり笑いを誘ったりするような作品が少ない。だからどこか優等生的で、「楽しむ」より「学ぶ」芸術祭になっている。このキマジメさはゲストディレクター坂本龍一の趣味を反映しているのだろうか。


島袋道浩《一石を投じる》。奥に北海道庁赤れんが庁舎が見える


スボード・グプタ《ライン・オブ・コントロール》

2014/07/18(金)(村田真)

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