2019年10月15日号
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artscapeレビュー

野村佐紀子「TAMANO」

2014年08月15日号

会期:2014/07/05~2014/07/24

B-GALLERY[東京都]

野村佐紀子のB-GALLERYでの連続個展の様相が今回大きく変わった。いつもの闇+ヌードではなく、明るい光があふれる空間で撮影された自然体のポートレートが並ぶ。しかも撮影されているのは、48名のお年を召した方たちだ。いつもの野村の写真を期待して見に行くと肩すかしを食うだろう。
今回展示された写真群は「瀬戸内国際芸術祭2013」の「宇野港街中写真プロジェクト」の一環として、「老人ホームなどの入居者をはじめとした岡山県玉野市に暮らす人々」をモデルとして撮影された。一見して感じるのは、写されている人たちが、皆とても「おしゃれ」だということだ。それもそのはずで、このプロジェクトには荒木経惟の撮影でずっとスタイリストをつとめてきた岩田ちえ子と、アパレルメーカーのパタンナーから老人施設のヘルパーに転じた久村み幸が協力している。つまり野村がシャッターを切る前に、二人がモデルたちに薄化粧し、衣服をコーディネートしているのだ。実は三人は川崎市の老人施設でもずっと同じような試みを続けていて、今回の撮影はその延長線上ということになる。
先に川崎市市民ミュージアムでの倉谷拓朴の展示を紹介したが、この「TAMANO」も一種の「遺影写真プロジェクト」といえるかもしれない。老人たちの中に埋もれかけていたエロスの力を、野村、岩田、久村が引き出し、それを丁寧なセッティングで写しとっている。結果的に、彼らが生きてきた時間の厚みが思いがけない形で花開いた、心を打つ写真群に仕上がっている。川崎でのプロジェクトも、どんな形になっていくのかが楽しみだ。

2014/07/17(木)(飯沢耕太郎)

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