2019年07月15日号
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artscapeレビュー

津田直「On the Mountain Path」

2014年08月15日号

会期:2014/06/27~2014/08/23

Gallery 916[東京都]

津田直の今回の個展に展示されたのは、「NOAH」、「REBORN (Scene3)」,「Puhu nin Amukaw」の3シリーズ、42点。「NOAH」はスイス・ヴァレー州の山中に張り巡らされた水路と、それを保全、管理する人々を追う。「REBORN (Scene3)」はここ数年通い詰めているブータンで、氷河が溶けてできたU字峡谷を、馬11頭を連ねて行く旅の途上の眺めである。新作の「Puhu nin Amukaw」では、1991年のピナトゥポ火山の大爆発で、火山灰に覆われた地域を撮影している。そこに最初に育つのが野生のバナナで、「Puhu nin Amukaw」というのは現地のアエタ族の言葉で「バナナの心」という意味だという。3シリーズに直接的な関連はないが、タイトルが示すように「山道」を辿るフィールドワークの産物というのが共通している。例によって、的確な写真の選択と配置によって、見る者を「眼差しの旅」へと誘っていく。

ちょっと気になったのは、津田の表現の落ち着き払った安定感だ。それはむろん、写真家=フィールドワーカーとしての自分の仕事に揺るぎない確信を抱いているということなのだが、破綻のない展示構成にはやや物足りないものも感じた。一年の大部分を旅の時間に委ねるという彼の仕事のやり方は、たしかに目覚ましいものではあるが、そろそろそれらを繋ぎとめていく、強く、太い原理を提示していく時期に来ているのではないだろうか。写真と言語の両方の領域で、津田にはその力が充分に備わっているはずだ。

なお、同時期に東京・六本木のタカ・イシイ・ギャラリー・モダンでは「REBORN(Scene2)」展が開催された。ブータンのシリーズのプラチナ・プリント・ヴァージョン(モノクローム)だが、あまり必然性は感じられなかった。

2014/07/02(水)(飯沢耕太郎)

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